愛してるって言ってくれていたのに、どうやらあれは嘘だったようです。……分かっていますよ、信じていた私が悪かったのです。

四季

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前編

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 私には愛おしい人がいる。
 彼は婚約者だ。
 エルバス、彼は私が将来を共にする人である。

 彼は知り合って間もなく私を大切にしてくれるようになっていった。優しい言葉をいつもかけてくれた。最初こそ少し怪しく思っていたけれど、次第に彼を信じるようになってゆき、気づけば私は彼を愛するようになっていっていた。

 けれど。

「ごめんなー、婚約、破棄するわ」

 今日、そう告げられてしまった。

 エルバスは笑顔だ。
 重要なことを言っている人とは思えないような顔つきである。

「待って、急過ぎるわ。昨日まで愛しているって言ってくれていたじゃない」
「ああそれは一応言ってただけなんだ」
「えっ」
「そういうこと! ま、そういうことなんで、婚約は破棄するね! ばいばーい」

 言いたいことはたくさんあって。
 けれども上手く言えず。
 言葉を見つけきれずにいるうちに時は流れて。

 ――結局何を言い返せないまま別れてしまった。

 説得するのは無理だった。
 それどころか何も言えず。

 ――私は捨てられた。

 愛している人に一方的に切り捨てられた切なさを抱えたまま、実家暮らしへ戻る。
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