婚約破棄されたうえ何者かに誘拐されたのですが、人違いだったようです。しかも、その先では意外な展開が待っていて……!?

四季

文字の大きさ
9 / 13

9話「嵐よ、去れ」

しおりを挟む

「お、お前はっ……まさか、伝説の魔王!?」

 動揺を隠せていないオーウェン。
 その声すらも震えて。
 まるで肉食獣の前で危機的状況に陥っている小鳥のよう。

「我のことを知っているとは」

 にやりと黒い笑みを浮かべるボンボン。

 今の彼はまさに『魔王』と呼ばれるに相応しい人物に見える。
 それこそこの世すべてを闇の渦に巻き込んでしまいそうな。
 そんな、得体のしれないカリスマ性と邪悪さもが同時にある『魔王』に見える。

 あちらの国にいた時とは雰囲気が違う。

「悪魔と呼ばれるようなやつがどうしてここに……」
「そうか、悪魔か――ま、何でもよい」
「と、とにかく! 邪魔はするな! これは彼女と俺の話だ! 無関係なやつは入ってくるな!」
「喚くな、小鳥が」
「ヴッ」

 的を射たことを言われたからかオーウェンは一瞬言葉を詰まらせていた。

「人が嫌がることはするなと習わなかったのか?」
「う、う、うるさい! 何でもいいだろ! 俺と彼女の話だ!」

 それにしても、今のボンボンは重厚感たっぷりな喋り方をしていてかなり怖そうだ。

 静かだけれど恐ろしさがある――そんな雰囲気。

「彼女は嫌がっているだろう、ならば大人しく去るのが道というものであろうが」

 真っ当な意見だと思う。

「お、お前に何が分かるんだ!」
「お主は一度彼女を捨てたのだろう?」
「なぜそれを!?」
「それを今さらやり直すなど、無理と思え」

 いや、本当にそれ。

 そんな風に言いたい気分だ。

 ボンボンは私の心を見事に表現してくれている。

「これ以上無理を言うのなら、お主の身がどうなっても知らんぞ」
「お、俺は! この国の王子だ! よそものの化け物が偉そうに、ふざけるな! ここは俺の庭! 俺に勝てる気でいるのか!」
「痛い目に遭うぞ」
「ふざけやがって……おい! お前ら! こいつを仕留めろ!」

 オーウェンが叫ぶと、従者らが一斉にナイフを取り出しボンボンに向かって投げつけた。手のひらに収まるくらいのサイズの武器は一斉にボンボンへ迫る。ボンボンは大きめな両手を振り回すようにしてそれらを弾き飛ばした。そして片腕を伸ばし、オーウェンの首を掴む。

「ぅぅっ……」

 オーウェンは苦痛に顔を歪める。

「お主、二度と彼女に近づくなよ」
「ぐ、ぅ……いい、から……はな、せっ……」
「近寄らないと誓え」
「ちっ……ち、ちか、うっ……」

 するとボンボンはオーウェンを離した。
 彼の細い身体がとすんと腰から地面に落ちる。

 刹那、従者の一人が投げた小型武器がボンボンの左肩に刺さる。

「ッ!?」

 一瞬、そうするようオーウェンが指示していたのかと思ったが。

「お、おい! 何してる! 勝手なことを!」

 どうやら従者の勝手な行動だったようだ。

「勝手なことして王子である俺が何かされたらどうするんだ! 相手は化け物だぞ!? くっ、まぁいい……ここまで! 皆、撤退だ!!」

 こうしてオーウェンたちは逃げるように去っていった。

 嵐は過ぎた。

「ボンボンさん! 大丈夫ですか!?」

 ハッと思い出し、駆け寄って尋ねる。

「ああ」

 言いたいことは色々ある。
 けれども今は彼の身体の状態が一番気になる。
 色々言葉を紡ぐのはその後だ。

「でも、攻撃されて……」
「いや問題ない」
「本当ですか? でも……刺さってますよ?」
「この程度であればどうということはない」
「嘘! いけません。手当てしないと」
「お主、案外心配性なのだな」
「心配性とかそんなのじゃないです」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。 国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。 隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。 「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜

百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。 「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」 ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!? ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……? サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います! ※他サイト様にも掲載

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

処理中です...