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9話「嵐よ、去れ」
しおりを挟む「お、お前はっ……まさか、伝説の魔王!?」
動揺を隠せていないオーウェン。
その声すらも震えて。
まるで肉食獣の前で危機的状況に陥っている小鳥のよう。
「我のことを知っているとは」
にやりと黒い笑みを浮かべるボンボン。
今の彼はまさに『魔王』と呼ばれるに相応しい人物に見える。
それこそこの世すべてを闇の渦に巻き込んでしまいそうな。
そんな、得体のしれないカリスマ性と邪悪さもが同時にある『魔王』に見える。
あちらの国にいた時とは雰囲気が違う。
「悪魔と呼ばれるようなやつがどうしてここに……」
「そうか、悪魔か――ま、何でもよい」
「と、とにかく! 邪魔はするな! これは彼女と俺の話だ! 無関係なやつは入ってくるな!」
「喚くな、小鳥が」
「ヴッ」
的を射たことを言われたからかオーウェンは一瞬言葉を詰まらせていた。
「人が嫌がることはするなと習わなかったのか?」
「う、う、うるさい! 何でもいいだろ! 俺と彼女の話だ!」
それにしても、今のボンボンは重厚感たっぷりな喋り方をしていてかなり怖そうだ。
静かだけれど恐ろしさがある――そんな雰囲気。
「彼女は嫌がっているだろう、ならば大人しく去るのが道というものであろうが」
真っ当な意見だと思う。
「お、お前に何が分かるんだ!」
「お主は一度彼女を捨てたのだろう?」
「なぜそれを!?」
「それを今さらやり直すなど、無理と思え」
いや、本当にそれ。
そんな風に言いたい気分だ。
ボンボンは私の心を見事に表現してくれている。
「これ以上無理を言うのなら、お主の身がどうなっても知らんぞ」
「お、俺は! この国の王子だ! よそものの化け物が偉そうに、ふざけるな! ここは俺の庭! 俺に勝てる気でいるのか!」
「痛い目に遭うぞ」
「ふざけやがって……おい! お前ら! こいつを仕留めろ!」
オーウェンが叫ぶと、従者らが一斉にナイフを取り出しボンボンに向かって投げつけた。手のひらに収まるくらいのサイズの武器は一斉にボンボンへ迫る。ボンボンは大きめな両手を振り回すようにしてそれらを弾き飛ばした。そして片腕を伸ばし、オーウェンの首を掴む。
「ぅぅっ……」
オーウェンは苦痛に顔を歪める。
「お主、二度と彼女に近づくなよ」
「ぐ、ぅ……いい、から……はな、せっ……」
「近寄らないと誓え」
「ちっ……ち、ちか、うっ……」
するとボンボンはオーウェンを離した。
彼の細い身体がとすんと腰から地面に落ちる。
刹那、従者の一人が投げた小型武器がボンボンの左肩に刺さる。
「ッ!?」
一瞬、そうするようオーウェンが指示していたのかと思ったが。
「お、おい! 何してる! 勝手なことを!」
どうやら従者の勝手な行動だったようだ。
「勝手なことして王子である俺が何かされたらどうするんだ! 相手は化け物だぞ!? くっ、まぁいい……ここまで! 皆、撤退だ!!」
こうしてオーウェンたちは逃げるように去っていった。
嵐は過ぎた。
「ボンボンさん! 大丈夫ですか!?」
ハッと思い出し、駆け寄って尋ねる。
「ああ」
言いたいことは色々ある。
けれども今は彼の身体の状態が一番気になる。
色々言葉を紡ぐのはその後だ。
「でも、攻撃されて……」
「いや問題ない」
「本当ですか? でも……刺さってますよ?」
「この程度であればどうということはない」
「嘘! いけません。手当てしないと」
「お主、案外心配性なのだな」
「心配性とかそんなのじゃないです」
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