8 / 13
8話「意外な救いの手」
しおりを挟む予定の日、私は魔王の部下に実家の近くまで移送された。
「アイリーン!? どうして!? 今までどこに行っていたの!?」
「何だと、アイリーンが見つかっただと」
母と父。
両親はかなり驚いていた。
でもまぁそういうものか――しばらく消えていた娘が帰ってきたら誰だって驚くだろう。
「良かった、貴女が生きていて……アイリーン、本当に、本当に良かったッ……!」
母は泣いていた。
両親をこんなに心配させて、私はハイレンジアで優雅に暮らしていたのか。そう思うと罪悪感があった。誰かから責められたわけではないけれど、それでも罪悪感というのは時に自然に生まれてくるものだ。
「ただいま、母さん」
その日、私は、何度も強く母を抱き締めた。
強く。
熱く。
ひたすら胸と胸を合わせて。
「心配させてごめんなさい。そして……気にかけてくれて本当にありがとう」
「アイリーン……良かった……」
「生きているわ、確かにね」
「不安だったの……でも、きっと帰ってくるって、信じていたわ……不安ではあったけれど……」
◆
「アイリーン、久々だな」
両親と暮らすように戻ってから数週間が経ったある日、懐かしい顔が家へやって来た。
オーウェンだ。
二度と見たくなかった彼が、従者と共に訪問してきたのだ。
「オーウェンさん……」
ああ、もう、目にするだけで吐き気がしそう。
どうしても関わりたくないと思ってしまう。
「実はな、メルリナの言っていたことが嘘であったとあの後判明したんだ。侍女らに聞き取り調査を行ったところお前が意地悪をしている目撃情報があまりにもなかった、そして、これまでにもメルリナに似たようなことをされた者がいたことが判明した」
オーウェンの口から出てきたのは意外な言葉だった。
本当のことを分かってもらえた、と、少し安堵したけれど。
「ま! 俺は薄々分かってたけどな!」
彼の謝罪する気のなさに呆れてしまった。
嘘を信じて一方的に切り捨てて城からも追い出した、にもかかわらず、真実が明るみに出てもなおこれだ。
「分かっていただけましたか」
「ああ!」
「なら謝ってください」
「は? 謝る? またまた~、馬鹿みたいことを言うなよなっ」
オーウェンは軽やかに笑っていた。
笑い事ではない!
私は名誉を傷つけられたのだから。
「で、話があるのだが」
「……何ですか」
「俺ともう一回婚約してくれ! やり直そう!」
あり得ない、本当に。
「お断りします」
私はきっぱりと言った。
もし誰かと関係を築くとしても、彼だけは相手に選ばない。
だってもう一度終わった関係だから。
あんな理不尽で勝手なことをされて『もう一度』なんて、絶対に受け入れられない。
「なっ……断るだと!? ふざけるな!! ふざけ過ぎだろう!! 王子が婚約しようと言っているのだ、それを拒否するのならこの国で生きてゆく権利はないぞ!」
「それでもお断りします。何でも言いなりになると思わないでください」
「なぜそんな生意気なんだ!」
「そもそも、婚約を破棄したのはそちらですよね? なぜ今になってやり直そうなどと平気で言えるのですか」
「全部メルリナの嘘のせいだろ。俺は悪くない」
どうやら、都合が悪くなったらすべての責任をメルリナに押し付けるスタイルのようだ。
「だから俺は悪くない。悪いのは嘘をついたメルリナだけだ」
「そうは思いませんし、だとしても無理です」
「王子たる俺に逆らうとは良い覚悟だな!!」
彼は拳を振りかぶる――が、次の瞬間、その拳は毛むくじゃらの手に捕まれ止められていた。
「な、何者だっ」
「我が名はボンボン」
殴られる、と思ったけれど、実際に殴られはしなかった。
なぜなら間にボンボンが入ってくれていたのだ。
この国の民ではない彼がどうしてここに、と思いながらも、この理解不能な奇跡にひとまず感謝する。
「彼女に触れるな」
突如目の前に現れた獣人にオーウェンはかなり驚き怯んでいるようだった。
0
あなたにおすすめの小説
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜
百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。
「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」
ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!?
ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……?
サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います!
※他サイト様にも掲載
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
貴方が側妃を望んだのです
cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。
「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。
誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。
※2022年6月12日。一部書き足しました。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。
表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。
※更新していくうえでタグは幾つか増えます。
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる