異世界恋愛短編集 ~婚約破棄されても幸せになることはできます~

四季

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お前みたいな出来損ない、俺の隣にいる権利はない――そう言っていた貴方を許す気はまったくもってありません。

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「お前みたいな出来損ない、俺の隣にいる権利はない。よって、婚約は破棄とする」

 婚約者である彼ローマンティスからそんな言葉を放たれたのはある夏の夜であった。

「え……そんな、どうして」
「どうしても何もない。婚約破棄は婚約破棄、それ以上でもそれ以下でもないに決まっているだろう」
「待ってください。その……あまりにも、急すぎて」
「お前にそんなことを言う権利があると本気で思っているのか? だとしたら馬鹿だな。馬鹿の極みだ」

 私が思いを告げても彼は愚か者を見るように嗤うだけ。

「なんにせよお前はもう要らんってことだ」
「ええっ……」
「黙れ! ではな。さらばだ」

 そうして私たちの関係は解消となったのだった。



 ――だがその直後私が『国護りの聖女』であることが判明する。

 この国に永く伝わる話に出てくる『国護りの聖女』は、かつてこの国が国難を乗り越えるために神がこの世に産み落とした特別な聖女である。
 ゆえに現代であってもそう認められた者に対しては国からかなり高額な補助金が出る。また生きてゆくための様々な面で支援も受けることができる。

 その事実が明るみに出た時、ローマンティスは私のもとへ帰ってきた。

「まさかお前が『国護りの聖女』だったとはな……」
「ええ。私も驚いています」
「そういうことなら話は別だ! お前と結婚してやってもいい! どうだ? 俺と結婚したいなら、その願いを叶えてやる!」

 彼は偉そうにそんなことを言ってきたけれど。

「いえ……私、既に婚約希望が幾つも届いているので、ローマンティスさんとやり直すことはしません」

 私は彼と生きることは選ばなかった。

「なぜ!?」
「貴方は一度私を捨てました。正当な理由もなく。そのような人に今さら良いことを言われても……まったくもって響きません」
「ふ、ふざけるな! 俺ならお前を幸せにできる! 決まっているだろう!」
「知りませんよ……」
「馬鹿女!」
「少なくとも、そうやって侮辱してくる人と結婚したい女性なんてこの世にはいないでしょう」

 彼とはもう終わったのだ。だからやり直すなんてことはしない。私は私の道を行く。幸せになるために、明るい未来を掴むために、私は過去へは戻らない。



 あの後私は心優しいもっちり系男子である第一王子と結婚した。
 そして彼に大切にされながら生きている。
 もう無駄に暗い過去を振り返ることはしないし、これからは希望ある未来だけを信じて歩んでゆくつもりだ。

 ちなみにローマンティスはというと、後に国営公園にて王家を過剰に批判する行動を起こしたために逮捕された。


◆終わり◆
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