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後編
しおりを挟む「何を言って……」
「婚約破棄するって言ってんだよ」
女性はフェルドムントの胴体に腕を絡めながらこちらを見てくすくす笑っている。
くだらない女のクセに、とか思われているのかもしれない。
ある意味ではそうなのかもしれない。それが事実なのかもしれない。私はモテモテな女ではないから。けれど、だからといって浮気されるのは、さすがにもう許せない。これまでは我慢してきたけれど、もうそろそろ耐えるのは限界だ。
「んもぉ、フェルドムントたらぁ、可哀想ぅ~」
「いいんだ、俺は君を一番に想っているから。そのためなら婚約くらい破棄したって」
「いやぁ~、んもぉ、男らしくて素敵ぃ」
こうして私の婚約時代は終わりを迎える。
「二度と俺の前には現れるな」
「本気なのですか?」
「当たり前だろ! 嘘なんか言うわけないだろ!」
「……そうですよね。では、さようなら」
やはり私には無理だったのか。
恋とか。
愛とか。
結婚とか。
――そんなもの、夢でしかなかった。
◆
あれから数年。
驚いたことに私は幸せを掴むことができた。
婚約が破棄となった数日後、あの女性が私に虐められたと嘘をつきそれを信じたフェルドムントが私のところへ殴り込んできた。二度と現れるなと言っていたわりにさくっと現れた。しかも彼は激怒していた。
フェルドムントは数時間にわたって私に暴言を吐き続けたが、それによって私に宿る破滅の女神の力が発動されてしまい――フェルドムントは粉々になってしまった。
自覚なく発動される力だから自分でもどうしようもないのだ。
その後、あの女性も、体調を崩したそうで。
近所のおばさまたちが話していた噂によれば、彼女も数ヶ月以内に亡くなったそうだ。
二人はあっという間にこの世から去ることになった。
これもまた破滅の女神の力だろうか?
その点は謎で私にもよく分からないけれど。
いずれにせよ、二人が幸せな家庭を築くことはなかった。
しかし私だけは現在まで生き延びたうえ幸せになれている。
今の夫である彼は、たぬきのような風貌の人だが、一緒にいるだけでほっこりさせてくれる人だ。しかも経済的にも裕福なので生きていくうえではなおさらありがたい。無論、それだけの理由で愛しているわけではないが。
私はこの温かな場所を守って生きていきたい。
◆終わり◆
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