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episode.61 もやもやと不安を越えて
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泣き出してしまった愛のプリンセス。せっかく気にかけて連絡してくれたのに泣かせてしまうとはこちらとしても悲しい。取り敢えず落ち着かせたい、どうにかしたい。そう思っていたのだが。
「何なんだ、いきなり」
盾のプリンスは不機嫌そうな面持ちで愛のプリンセスに言葉を向ける。
「突然連絡してきておいて急に泣き出すなど意味が分からない。正直不愉快だ。情緒不安定にもほどがある」
『へ……? へ、へへへ……?』
「そんなことをして気を引こうとしているのか? だとしたらやめてくれ。いや、君がそういうことをするのは好きにすればいいが、せめて私のいないところでやってくれ」
あぁもう……余計なこと言わなくていいのに……。
『ぶえええええ! ぶばばばばぼべんだだあぁぁぁい!!』
愛のプリンセスはさらに号泣。
そして通信は切れた。
どうしよう……これ……。
もう一度愛のプリンセスに連絡して先ほどの発言は気にすることなんてないと伝える方が良いのだろうか。だが、それを伝えようとしても、今の彼女だと聞けないかもしれない。号泣しているところに言葉をかけてもきっとまともには伝わらないだろう。
ならば今は放置しておくしかないのか?
でも、彼女をこのまま放っておくと、私の印象が悪くなるような気もする……。
「盾のプリンスさん、どうしてあんなことを言ったのですか」
意外なところで厄介なことが発生してしまった。
「どうして? 思ったことを言っただけだが」
「あんな風にさらに泣かせて」
「私がさらに泣かせたわけではない。彼女が勝手にさらに泣いただけだろう」
盾のプリンスは少し寂しそうに眉を寄せ「なぜそんな顔をする?」と問いを放ってきた。
「……困ります、あんなことをされては」
「なぜ君が困る? 理解できない」
「だって! 愛のプリンセスさんをあんな酷く泣かせたって思われたら! そんなことになったら……皆さんから良い印象は抱かれないでしょう」
それでなくても強くなく足を引っ張りがちだというのに。それに加えて和を乱す人物だと思われたら。そんな風に思われたら、今度こそ、見捨てられてしまうかもしれない。今はまだ辛うじて仲間に入れてもらえているけれど、さらにやらかせば価値無しと判断されるかもしれない。
最初の泣きだけであれば、いつもの言動の延長のようなものだから、大事になんてならなかっただろう。励まして彼女が落ち着いてくれたならそれで済んだだろう。
でもそれ以上になってしまったら。
どうすれば良いのか。
「君は悪くない、それが真実だろう。もし何か言われたなら説明すればいい」
「でも!」
「まだ何かあるのか?」
「私の説明が聞いてもらえる保証なんて」
「なら私が説明する。それなら君も悩まないだろう」
それで解決するのか?
疑問ではあるが。
「なんにせよ、君を悪くは言わせない」
でも、こうなってしまった以上、過剰に考えても無駄なのかもしれない。
「最初からそうだ。君に罪はない」
今は……この件が大事にならないことを願おう。
――と思っていたのだが、少ししてまた愛のプリンセスから通信が入った。
どうしよう、と思いつつも、無視するわけにはいかないので対応する。
そうしてパネルに映し出されたのはまだ赤い顔をしているものの一応泣き止んでいる愛のプリンセスだった。
『フレレ……さっき、ごめん……なさい……』
「愛のプリンセスさん……」
『アイアイ、盾プリさんの圧にちょっとびっくりして……それで……ごめんなさい、あんな風になってしまって……』
肩を落としてしょんぼりする愛のプリンセス。
『フレレは……悪く、ないんです……アイアイがやらかしただけでー……』
その時。
「愛のプリンセス」
急に盾のプリンスが口を開く。
これ以上余計なことを言わないでくれよ……と思いつつ様子を見る。
『ひゃうっ!?』
「先ほどはすまなかった」
『ふぇ……?』
早速泣き出しそうな顔になる愛のプリンセス。ただ、まだ本格的に泣いてはいない。声をかけられるだけでも泣きたくなるようだが、懸命に堪えている。
「発した言葉に偽りはないが無礼であったなら謝ろうと思う。すまなかった」
『ふへ……?』
「そして、今回の件に関して悪かったのは私だけだと、そういうことにしてくれ」
『へ……あの……えと、それはどういう……?』
「君をあんな酷く泣かせたと思われたら皆から良い印象を抱かれない、と、クイーンが不安がっていた」
そのまま言うの!?
正直というか何というか……はぁ。
でも仕方ない。私がそういうことを言って気にしていたのは事実、そこは変わらないのだから、それを誰かが知ったとしても仕方のないことなのだ。
『そうなんですか!? フレレ!?』
「気にしすぎているかもしれないとは思っているのですけど……その、実は、ちょっと不安になったりして……」
『大丈夫です! そんなことそんなこと、絶対ないですから!』
「すみません、何というか」
『心配しないでください! フレレを悪くなんてぜーったいに言わせません! だから安心してください! アイアイはそこそこ変ですけど、でもでも、実は仲間思いなんですっ。なので、フレレを悪く言うやつには天罰を下しまーっす! 愛の天罰ですーっ!!』
テンションの急上昇が凄い。
でも……この感じだとややこしことにはならずに済みそうだ。
『そういえばっ。今さらかもですけど、フレレのそのティアラとっても可愛いですーっ』
「ありがとうございます」
『盾プリさんからの贈り物ですか? もしかしてもしかして、恋の予感!? キャーッ、ワクワクしてきましたーっ! ぶへへへへ』
最後の笑い方。
「べつにそういうわけではないんですよ」
『そうなんですかー?』
「はい。発見してくれたのが盾のプリンスさんだっただけなんです」
『発見? ほえー、そうなんですかー。でもでも、とっても似合ってますし、フレレ、良かったですねっ!』
余計なことを考えてしまった部分はあったが、何とか無事乗りきれた。
「何なんだ、いきなり」
盾のプリンスは不機嫌そうな面持ちで愛のプリンセスに言葉を向ける。
「突然連絡してきておいて急に泣き出すなど意味が分からない。正直不愉快だ。情緒不安定にもほどがある」
『へ……? へ、へへへ……?』
「そんなことをして気を引こうとしているのか? だとしたらやめてくれ。いや、君がそういうことをするのは好きにすればいいが、せめて私のいないところでやってくれ」
あぁもう……余計なこと言わなくていいのに……。
『ぶえええええ! ぶばばばばぼべんだだあぁぁぁい!!』
愛のプリンセスはさらに号泣。
そして通信は切れた。
どうしよう……これ……。
もう一度愛のプリンセスに連絡して先ほどの発言は気にすることなんてないと伝える方が良いのだろうか。だが、それを伝えようとしても、今の彼女だと聞けないかもしれない。号泣しているところに言葉をかけてもきっとまともには伝わらないだろう。
ならば今は放置しておくしかないのか?
でも、彼女をこのまま放っておくと、私の印象が悪くなるような気もする……。
「盾のプリンスさん、どうしてあんなことを言ったのですか」
意外なところで厄介なことが発生してしまった。
「どうして? 思ったことを言っただけだが」
「あんな風にさらに泣かせて」
「私がさらに泣かせたわけではない。彼女が勝手にさらに泣いただけだろう」
盾のプリンスは少し寂しそうに眉を寄せ「なぜそんな顔をする?」と問いを放ってきた。
「……困ります、あんなことをされては」
「なぜ君が困る? 理解できない」
「だって! 愛のプリンセスさんをあんな酷く泣かせたって思われたら! そんなことになったら……皆さんから良い印象は抱かれないでしょう」
それでなくても強くなく足を引っ張りがちだというのに。それに加えて和を乱す人物だと思われたら。そんな風に思われたら、今度こそ、見捨てられてしまうかもしれない。今はまだ辛うじて仲間に入れてもらえているけれど、さらにやらかせば価値無しと判断されるかもしれない。
最初の泣きだけであれば、いつもの言動の延長のようなものだから、大事になんてならなかっただろう。励まして彼女が落ち着いてくれたならそれで済んだだろう。
でもそれ以上になってしまったら。
どうすれば良いのか。
「君は悪くない、それが真実だろう。もし何か言われたなら説明すればいい」
「でも!」
「まだ何かあるのか?」
「私の説明が聞いてもらえる保証なんて」
「なら私が説明する。それなら君も悩まないだろう」
それで解決するのか?
疑問ではあるが。
「なんにせよ、君を悪くは言わせない」
でも、こうなってしまった以上、過剰に考えても無駄なのかもしれない。
「最初からそうだ。君に罪はない」
今は……この件が大事にならないことを願おう。
――と思っていたのだが、少ししてまた愛のプリンセスから通信が入った。
どうしよう、と思いつつも、無視するわけにはいかないので対応する。
そうしてパネルに映し出されたのはまだ赤い顔をしているものの一応泣き止んでいる愛のプリンセスだった。
『フレレ……さっき、ごめん……なさい……』
「愛のプリンセスさん……」
『アイアイ、盾プリさんの圧にちょっとびっくりして……それで……ごめんなさい、あんな風になってしまって……』
肩を落としてしょんぼりする愛のプリンセス。
『フレレは……悪く、ないんです……アイアイがやらかしただけでー……』
その時。
「愛のプリンセス」
急に盾のプリンスが口を開く。
これ以上余計なことを言わないでくれよ……と思いつつ様子を見る。
『ひゃうっ!?』
「先ほどはすまなかった」
『ふぇ……?』
早速泣き出しそうな顔になる愛のプリンセス。ただ、まだ本格的に泣いてはいない。声をかけられるだけでも泣きたくなるようだが、懸命に堪えている。
「発した言葉に偽りはないが無礼であったなら謝ろうと思う。すまなかった」
『ふへ……?』
「そして、今回の件に関して悪かったのは私だけだと、そういうことにしてくれ」
『へ……あの……えと、それはどういう……?』
「君をあんな酷く泣かせたと思われたら皆から良い印象を抱かれない、と、クイーンが不安がっていた」
そのまま言うの!?
正直というか何というか……はぁ。
でも仕方ない。私がそういうことを言って気にしていたのは事実、そこは変わらないのだから、それを誰かが知ったとしても仕方のないことなのだ。
『そうなんですか!? フレレ!?』
「気にしすぎているかもしれないとは思っているのですけど……その、実は、ちょっと不安になったりして……」
『大丈夫です! そんなことそんなこと、絶対ないですから!』
「すみません、何というか」
『心配しないでください! フレレを悪くなんてぜーったいに言わせません! だから安心してください! アイアイはそこそこ変ですけど、でもでも、実は仲間思いなんですっ。なので、フレレを悪く言うやつには天罰を下しまーっす! 愛の天罰ですーっ!!』
テンションの急上昇が凄い。
でも……この感じだとややこしことにはならずに済みそうだ。
『そういえばっ。今さらかもですけど、フレレのそのティアラとっても可愛いですーっ』
「ありがとうございます」
『盾プリさんからの贈り物ですか? もしかしてもしかして、恋の予感!? キャーッ、ワクワクしてきましたーっ! ぶへへへへ』
最後の笑い方。
「べつにそういうわけではないんですよ」
『そうなんですかー?』
「はい。発見してくれたのが盾のプリンスさんだっただけなんです」
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余計なことを考えてしまった部分はあったが、何とか無事乗りきれた。
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