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前編

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「お前との婚約なんぞ破棄だぁ! 消えろぉ!」

 突如かけられた心ない言葉。
 意味が分からず困惑。
 婚約者ルルベル、彼の言葉選びの酷さが理解できず戸惑いしかない。

「ええっ」

 思わず心の声を漏らしてしまった。

「うっせぇ! 消えろってんだぁ! くずぅ!」
「え? あの、え?」
「消えろってんだよ! 婚約は破棄、なんだよぉっ! いいか? はよ消えてくれや!」

 ルルベルの口の悪さはどんどん酷くなっていっていく。
 もはやどうしようもないくらいだ。
 こんなことを他者に平然と言えるなんて正直どうかしていると思う。

 だって、消えろ、だ。

 常識的に考えておかしいだろう。

 常識がこの世のすべてでないとしても、だとしても、そのようなことを他者に平然と言えるという神経は普通ではないと思う。

 少なくとも、この世の多くの者はそのようなことを発しはしない。
 たとえ思ったとしても、だ。
 たとえそのように思っていたとしても、ほとんどの者は言わないで心の中に置くだけにしておくだろう。
 そのような内容を堂々と悪気もなさそうに言えるというのは、人としてどうなのか。

 ま、なんにせよ、彼と共に生きてゆくのは無理そうだ。

 そのようなことを平気で言えるような人とは付き合っていけない。
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