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大人しく真面目な婚約者が裏であんなことをしているなんて……夢にも思いませんでしたよ、びっくりでした。
しおりを挟む婚約破棄された。
まさかの出来事だった。
本当に。
何度考えても信じられないことだ――きっかけは、婚約者である彼オールドガの浮気。
オールドガは大人しく真面目な青年だ。
浮気なんて少しもしそうにない人である。
でも現実は違った。
彼は女を私以外に二人も隠し持っていたのだ。
で、そのことで喧嘩になり、婚約破棄されて――それで今に至っている。
「ねえお腹空かない?」
「空いた」
「じゃあ何か食べましょうよ、耐えられないわ」
「トランプ終わってからな」
ちなみに私はというと、今は、近所に住んでいる異性の幼馴染みロッタとトランプをして遊んでいる。
なんてことのない、平和そのものな日常。
「ええー……厳しい……」
「何だよそれどういうことだよ」
「早く何か食べたい」
「食いしん坊だなぁ相変わらず」
「もうっ! 意地悪!」
「でもそういうところ結構好きなんだけどな」
ロッタの口から出たのは想定外な言葉。
「え」
思わず声がこぼれる。
暫し、沈黙の中で見つめ合った。
静寂の中で視線だけが絡まると何とも言えぬ空気になってしまう――けれどもそのほのかな温かみに癒されるような感覚すらあって。
「……ありがとう、ロッタ」
やがてそう礼を言えた。
◆
――二年後。
「ロッタ! 起きて! 乳しぼりの日よ!」
「あ、そうか……うーん、もう少し寝たい……」
私はロッタと結婚した。
今は牛を飼って暮らしている。
「駄目よ! 寝ないで!」
「うーん。う、うん……起きる、よ……っ、よし! 起きた!」
「じゃあ出発ね!」
「はやっ」
「準備そんなにかからないでしょ?」
「ま、そうだな」
穏やかな幸福の中で生きられることに感謝をしながら、今日も息をする。
ちなみにオールドガはというと、あの後ある女に騙されて一文無しになってしまったそうだ。
自滅してしまったってことね!
◆終わり◆
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