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7話「また会えました」
しおりを挟むそれにしても、今日は平和だ。
母はウォシュル関連の話ばかり振ってくる。しかもやたらとハイテンション。いつものテンションを遥かに超えたテンションでたびたび話しかけてくる。
が、それを含んだとしても、日常が平和であることに変わりはない。
……多少の波はあるけれど。
でもそれはほどよいスパイスみたいなものだ。
「そうとも限らないんじゃな~い?」
「王家には王家の格というものがあるの!」
「でも彼はリアを気に入っているみたいよね? それってそういうことでしょう。きっとそうよ!」
「きっとそう、って……どうしてそんなこと言えるのよ」
「女の勘よ!」
「えええ……いやいや女の勘って、そんな雑な……」
すると母は片手の人差し指をぴんと立てて唇の横辺りに軽く添える。
「ふふ。そうね雑よね。けど、案外あるものなのよ? 女の勘っていうのは」
お茶目に笑う母。
「彼がいらっしゃる日、楽しみね」
◆
その日はあっという間にやって来た。
来てしまった、いよいよこの約束の日が……。
朝から変な汗が出ている。しかも得体のしれない悪寒まであるような気がする。でも熱を測っても上がってきているわけではない。まさか風邪か、と、一瞬焦った。しかしどうやらそうではないようだった。
……ということは緊張か?
そんなことをあれこれ考えているうちに時間がやって来て、ウォシュルを乗せた馬車が家の前に到着する。
「こんにちは!」
馬車から降りてきた彼はやや強い日射しに照らされて神々しさすら感じさせる姿になっていた。
ただ、挨拶自体は軽やかで、爽やかを絵に描いたような感じだ。
「お久しぶりです」
こちらが取り敢えずそれだけ言えば。
「またお会いできて嬉しく思います」
彼はさらりとそんな言葉を返してくれた。
そして自然と握手を交わす。
「今日はお土産を持ってきましたので」
「え……お、お土産……? ですか………?」
「王城近くの店にて販売しているお菓子です。後で従者よりお渡ししますので。よければぜひどうぞ」
「そうですか、それは嬉しいですありがとうございます」
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