そんなに愛し合っているなら彼は譲りますよ。~そして二人は災難に見舞われることとなる~

四季

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1話

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「お前だけを愛している! 婚約してほしい!」

 そう言われたのはいつだったか。
 確か、それほど前ではないはずだ。
 彼のあの言葉によって親が良い気になり、私は彼と婚約することとなったのである。

 ――だが。

 婚約から数週間が経った頃から、婚約者ゲインには女の影がちらつくようになり。友人が女性と一緒にいるゲインを目撃したり、良くない噂を聞いたり、というようなことが多発。

 そして今日、ついに、ゲインに深い仲の女性がいることがはっきりと明らかになった。

 この目で見たのだ。

 二人きりでいちゃつくゲインと赤毛の女性を。

「ねーぇ、ゲイン、本当にいいの?」

 ゲインが女性の紅の塗られた唇に人差し指をあてがえば、女性はどこか遠慮がちな目つきと表情を作る。

「もちろんさ」

 しかしゲインは下がらない。

 女性よりゲインの方が積極的な様子だ。

「でもぉ、あたしにはいないけどゲインには婚約者がいるんでしょぉ? 揉めたりしない?」
「するわけないだろ。それに、たとえ揉めたとしても、それでもいい。それでも、ミシェリア、お前が一番好きなんだ」

 それから二人は唇を重ねる。

 その様子を見ていた私は、思わず、「こんなところでそんなことする!?」と言いかけた――もちろん、ぎりぎりのところでこらえたけれど。

「本当に一番?」
「もちろんさ」
「でもぉ、いいのぉ? 婚約者さんがいるのに、あたしのこと一番とか言ってぇ」
「あいつは聞いてねえよ」
「もしばれたらぁ」
「気にすんな。それより、もっと、今を楽しみ今に溺れようじゃないか」
「ま、そうねぇ」
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