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しおりを挟むここが自室なら、あるいは密室なら、いちゃつくのも分からないではない。だが、二人がいちゃついて口と口を寄せているのは、一般人が通ることも十分に考えられる場所。大通りからは少々離れた路地ではあるけれど、それでも、店が並んでいるような地だ。それはつまり、万が一それらの店に客が来ればほぼ確実にいちゃつきを見られてしまう、ということだ。
もっとも、二人の世界に入り込んでいる彼らはそんなこと気づいていないのかもしれないが。
いや、現に、私に見られている。
けれども二人は気づいていない。
やはり、今の彼らは二人の世界の外のことなんて何も察知できない状態なのだろう。
「あたし、ゲインが好きよ。貴方だけを愛しているわぁ」
「俺もお前だけを愛してる」
「うふふぅ」
「はは」
「ずっとこれからも一緒にこうさせてねぇ」
――さて、これからどうしようか。
私とゲインは婚約者同士。
でも彼はもう私との関係を維持する気はないのだろう。
ばれなければ、くらいにしか思っていないのだろう。
――ならば終わらせてやろうか。
「あ、こんにちは! ゲインさん!」
何事のなかったかのような顔で現れて。
「ゲインさんって、お好きな方がいらっしゃったんですね!」
「な……なぜお前が……!?」
青ざめる彼を見て楽しみながら。
「話を聞いていましたけど、私、どうやら邪魔みたいですね。じゃ、婚約は破棄しますねっ」
さっぱりと終わりを告げる。
「ただし、契約違反は罪なので、お金は支払っていただきますよ」
無邪気な笑顔でさよならを。
ここでお別れだ。
その後私は両親にこのことをすべて話した。
すると父が激怒。
父はすぐにゲインに連絡し、婚約破棄について正式に伝えてくれた。
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