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前編
しおりを挟む愛してるの言葉なんてくだらないものなのだと気づいた。
――そう、私は今日婚約破棄された。
彼は私にいつも「愛してる」と言ってくれていた。
非常にこまめな彼は日常の中で愛を伝えることすら手を抜かない人だった。
だから信じていた。
彼のことを。
彼の愛を。
――けれどそれは嘘だった。
『ねぇ、今夜どこに泊まる?』
『君とならどこでも。高級なところでもいいよ。好きなところを選んで』
彼が知らない女性と歩いているところを偶然見かけてしまって。
『ええー? 好きなところ、とか、そんなこと言うなら……高いとこ言うわよ?』
『もちろん、いいよ』
『お金なくなってたら婚約者さんに気づかれない? 大丈夫なの、本当に』
二人の会話を聞いていたら。
『当たり前。あいつは金かからないし。それに、あいつのために使う金なんてないしね。けど、一応、金というのはどこかで使っておく方がいいんだよ』
『だからあたしに?』
『そうそう』
彼の中には私への愛なんて欠片ほどもなかったのだと、現実を知ることとなってしまった。
『ありゃりゃあ……それはちょっと可哀想よ?』
『いいんだ、何でも』
『まぁそうではあるけれど……』
『君の笑顔の方がずっとずっと愛おしいよ』
その後私はそのことについて彼に話したのだが、急に不機嫌になられてしまい、その流れのままに婚約破棄を宣言されてしまったのだった。
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