私を選んでくださってありがとうございます。~婚約破棄、そして、現れたたくさんの幸せをくれる人~

四季

文字の大きさ
1 / 2

前編

しおりを挟む

 とある田舎の町で生まれ育った私リールには婚約者がいる。

 彼の名はフィッシュリゾーレ。
 町では女性からの人気も高い青年だ。

 しかし彼は私に対してことあるごとに嫌みやら何やらを言ってくる。

 命令されて掃除をすれば埃が一つ残っているだなんだと些細な問題点を無理矢理見つけ出され、指示された通りに料理を作れば美味でないとかお前の腕が低級なせいでかす料理になったなどと悪口を言われ――と、彼と過ごす日々はまるで地獄の日々のようだ。

 前に一度、どうしてそんなことを言うのかと尋ねてみたことがある。

 しかしまともな答えはもらえず。
 さらに侮辱されることとなってしまっただけで終わった。

 そんなある日の昼下がり、いつものように洗濯物を干していた時、フィッシュリゾーレは突如婚約破棄を告げてきた。

「婚約破棄、ですか?」
「ああ」
「関係を終わりにする、ということですね」
「そういうことだ」

 私としては、関係をおしまいにするというのは大歓迎である。

 彼は性格が悪い。
 そんな人と一緒にいて楽しさなんてあるわけがないし、未来への希望だって持てるはずがないではないか。

 婚約破棄される。
 それが彼と離れられる有力な手であるのであれば。

 正直それは私にとって都合の良い展開である。

「お前は無能過ぎた」
「……おっしゃりたいことはそれだけですか?」
「何だと」
「もう、よいのでしょうか?」
「リール? 何を言っている? それに……何やら生意気じゃないか」

 眉間にしわを寄せるフィッシュリゾーレ。

「今とても嬉しい気持ちです」

 でも、もう、怖いものなんてないわ。

 だってそうでしょう? 彼とはこれでおしまい。それなのに何を恐れるのかしら? もう終わり、もうさよなら、なのに恐れることなんてある?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

いきなり悪行なんて言われましても……心当たりがないのですが!? ~嘘つきには天罰がくだるでしょう~

四季
恋愛
いきなり悪行なんて言われましても……心当たりがないのですが!?

婚約破棄され、親から心ないことを言われ、家出することにしました。~それが新しい出会いのきっかけとなりました~

四季
恋愛
婚約破棄され、親から心ないことを言われ、家出することにしました。

もう好きと思えない? ならおしまいにしましょう。あ、一応言っておきますけど。後からやり直したいとか言っても……無駄ですからね?

四季
恋愛
もう好きと思えない? ならおしまいにしましょう。あ、一応言っておきますけど。後からやり直したいとか言っても……無駄ですからね?

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

婚約者の母親に虐げられていましたが敢えて捨てられることで縁を切ることができました。~彼女らは勝手に破滅していったようです~

四季
恋愛
婚約者の母親に虐げられていましたが敢えて捨てられることで縁を切ることができました。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。

四季
恋愛
明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。

処理中です...