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前編
しおりを挟む編み物が趣味な私ローゼインマリーは婚約破棄された。
というのも、婚約者の彼オッズは私のことを良く思っていなかったのだ。
もっとおしゃれしていて派手な感じの女性がいい、と、彼はいつも言っていた。
で、やがて浮気されたうえ一方的に理不尽に婚約破棄されたのだ。
でも、正直私はあまり気にしていない。
だって編み物が好きなことは変えられるようなことではなかったから、それが理由なら捨てられるのは仕方ないと思っていた。
……慰謝料やら何やらお金を取られなかっただけましだ。
◆
オッズから婚約破棄を告げられた日から数年、私は無事良い人と結婚できた。
そして今、穏やかに暮らせている。
「これ飲む? ローゼインマリー」
「何それ、お茶?」
私と夫は三つ年が違う。
ちなみに、夫の方が年上だ。
出会いは刺激的なものではなかった。でも、それでも、一緒にいるうちに心通い合って。いつしかお互いが近くにいることが普通のようになっていた。今さら手を離すことなどできない、そう言って、果てに結ばれたのだ。
「ああそう。美味しいお茶なんだ、ちょっとだけ酸味があって」
「酸味?」
「少し変わった味だけど」
「腐ってるの?」
「違うんだ、こういう味なんだって」
「へえー、そんなものがあるのね。いいわ、飲んでみる! 何事も経験よね」
「どうぞ」
「ありがとう!」
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