婚約者の母親に婚約破棄を告げられました。～それでも私たちの間の糸は繋がっていたのです～

後編

「いいわね？」
「お待ちください、アルベスはそのことを知っているのですか？」
「はぁ？　何よそれ、馬鹿にしているのかしら」
「いえ、そのようなつもりはありません」
「ならいいわよね？　婚約破棄を受け入れたわね？　じゃ、それで。さようなら、リエムさん」

　強制的に追い出される。
　さらに「二度と現れないで、もうあなたは要らないから」と吐き捨てるように言われてしまった。

　こうして私とアルベスの関係は終わってしまった。

　できれば本人と話をしたかったのだけれど。
　それは許されず。
　彼と喋って意図を確かめることも不可能だった。


　◆


　それから数日、私は、アルベスとアルベスの母親が大喧嘩になったらしいという噂を耳にした。

　勝手に婚約破棄したことを知ったアルベスは激怒。
　母親を殴り倒した後、彼は、縁を切ると言ってさっさと家から出ていったそうだ。

　ちなみに、母親は、その際に負った怪我によって死亡したそうだ。
　治療が間に合わなかったのだとか。
　早く手当てしていれば助かっていたかも、と、医師は話していたらしい。


　◆


　あの婚約破棄から数ヶ月、私はアルベスとやり直すことになった。

「本当にごめん、母が」
「いいわよべつに」
「母との縁はもう切ったから。もう二度とリエムさんに嫌な思いはさせないから。だから安心してほしいんだ」

　一度は終わった彼との関係。
　でも再び始まった。
　私と彼を繋ぐ糸はどうやら切れきってはいなかったようだ。

「リエムさん、きっと幸せにするから」
「もう人を殴っては駄目よ？」
「……絶対しない」
「腹が立っても落ち着いてね。話なら聞くから」


◆終わり◆