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前編
しおりを挟むこの国で多くの人々からあがめられている『平穏の乙女』の生まれ変わりである私――レイフィット・リベリアには、同じ年生まれの幼馴染みがいる。
そして、その彼ビボラこそが、我が婚約者なのである。
これまでと何も違わないビボラとの道が続いてゆくのだと思っていたのだが、ある冬の日……。
「リベリア、婚約は破棄することにしたから」
そんなことを何の前触れもなく告げられてしまった。
「え。何を言っているの……?」
すぐには理解が追いつかない。
冗談か本心かすら即座には察することができず。
ただ固まってしまうばかり。
「だから、婚約破棄、って」
ビボラはさらりともう一度同じことを言った。
どうやら彼には罪悪感なんてものは少しもないようだ。
「ほ、本気……? なの……?」
らしくなく、声が震えてしまう。
「もちろん本気だよ」
「でもどうして。信じられないわ。私、何かやらかしたかしら」
「飽きたから、それだけだよ」
「そ、それだけっ……!?」
「うん」
「そ、そうだったの……それは、その、驚いたわ」
「じゃ、そういうことなんで。ばいばい、リベリア」
こうして私はビボラに捨てられた――まさかの婚約破棄だった。
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