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前編

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 その日は休日だった。

 穏やかに晴れた心地よい日。
 私は夫であるフィンクスと共にのんびりと昼を過ごす。

「今日はいい天気だね~」

 木でできた椅子に座って、意味もなく窓の外を眺めていたフィンクス。彼は白色のカップに注がれたコーヒーを一口だけ飲んで、それからぼんやりとした表情で呟いた。

「そうね」
「天気がいいって素晴らしいな~」

 こんなどうでもいい会話が急に始まるのも、わが家ではよくあること――何も驚くようなことではない。

「砂糖取ってもらっていい?」
「ええ。……はい、どうぞ」
「ありがとう~。助かった~。いつもありがと」
「どういたしまして」

 休日とは少々退屈なものだ。
 でも私は彼と過ごす休日は嫌いではない。

 だって、穏やかで幸せ。

 刺激はなくても幸福は感じられる。私はそう考えている。もちろん人によって意見は違うかもしれないけれど。でも私は平穏こそが愛おしいと思うのだ。
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