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後編
しおりを挟む「そういえばさ、東の角の家の娘さん婚約破棄されたんだってね~」
「そうなの?」
「うん、なんか浮気されてて問い詰めたら破棄されたって~」
「何それこわ」
「でしょー、びっくりするよねー」
彼は砂糖を小さなスプーンですくってカップの中へ入れた。
「でもその婚約者の相手だった女の人、結婚詐欺師だったらしくってさ」
「まさかの展開!?」
「婚約者だった人、結果的に、金を搾り取られて一人になってしまったんだって~」
「ええっ……わざわざ婚約破棄までしたのに……」
私は紅茶を飲む。
これは日常だ。
というのも、私、コーヒーはあまり飲めないのだ。
だから私とフィンクスはいつも違ったものを飲んでいる。
でもそのことが揉め事の種になったことは一度もない。
「彼だけが本気だったんだろうね」
「何それ……怖すぎ……」
「井戸端会議のテーマになってたよ~」
「奥様方は確かにそういう話は好きそうね」
「すっごく盛り上がってたなぁ」
「さすがね」
フィンクスは寛容な人だ。
小さなことでは怒らないし、些細な違いに苛立つこともない。
「今日のコーヒー美味しいね」
「そう?」
「え、そんなつもりじゃなかった感じ?」
「いえ……。ただ、私、いつも味見していないから」
「いつも美味しいよ。でも今日は特に美味しい気がするな~」
「話題が良かったのかしら」
「いやいや! それはちょっと!」
「ふふ、冗談よ」
私はこれからもずっとフィンクスと共に生きていきたい。
美味しいものを飲んで、美味しいものを食べて、そうやって生きてゆけたなら――きっといつまでも幸せでいられるはずだ。
◆終わり◆
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