異世界恋愛作品集 ~さくっと読める!? 大変なことやややこしいことがあっても乗り越えて幸せを掴みます~

四季

文字の大きさ
32 / 103

私は人は苦手です、しかし花はとても好きなのです。~舞い込んできた良縁は我が人生を大きく変えました~

しおりを挟む
 私は花を育てるのが好きだ。

 人は苦手。
 だって怖いから。

 すぐに嫌なことを言ってきたりしてきたりする人間はどうしてもあまり好きにはなれない。

 もちろん、良い人だっている。それは知っているし分かっている。でも、悪い人と巡り会ってしまう可能性だってどうしても排除できないわけで。それがとても恐ろしいから、出会いを避けてしまう傾向にあるのだ。

 言葉を交わすことすらできない、とまではいかないけれど。

 でもなるべく離れていたいのだ。

 そんな私の心のオアシスこそが花なのである。

 花は私を傷つけない。
 だから好き。

 そして、ただぼんやり眺めているだけで癒されるので、それも良い点である。

 かつて私には婚約者がいた。
 彼の名はルーレス。
 当時の私は彼のことを愛していた。

 ……でも彼は私を切り捨てた。

 一度だけ会った私の友人であるミレーナーとルーレスは浮気して、そして、その果てに己の罪をごまかすため一方的に婚約破棄してきたのである。

 その出来事もまた、私の人嫌いをぐんと育てた。

 ……まぁもう過去の話だしすべて過ぎ去ったことなのでどうでもいいことなのだが。

 ただ、あの時受けたショックによる傷は、今もこの胸に残っている。

「ああ今日も綺麗だなぁ」

 花を眺めて、呟く。

 誰にも届かない声。
 でもそれでいい。
 きっと花たちは聞いてくれているだろうから。

「元気に育ってね」

 私にはもう恋とか愛とか結婚とかは無理かもしれない。
 でもそうなってしまったならそれもまた運命、そういうものだろう。

 人と生きない人生、それが定めであるのだとしたら、私はそれを受け入れる。

 幸い両親は私の心を理解してくれているのでここでこのまま生きてゆくことは可能だ。だからそれでもいい。そういう運命なのであれば、それが神の決定であるのなら、私はそれに抗うことはしない。


 ◆


 二十五歳の春、私は、齢二十六という若き領主であるシーデルーと結婚した。

 彼との出会いはうちの前。
 庭で花の世話をしている時にたまたま通りかかった彼が声をかけてくれ、お互いに花好きであったこともあり一気に仲良くなった。

 そして結婚にまで至ったのである。

 花が連れてきてくれた縁。
 今はそれを何よりも愛おしく思っている。

 人は苦手、それは今も変わらなくて。けれどもシーデルーに関しては苦手ではない。共通の話題があるからだろうか、会話していても飽きないし沈黙が訪れてしまうといったこともない。彼と一緒にいる時は穏やかな心のままでいられる。

 ちなみにルーレスとミレーナーはあの後すぐに破局したそう。

 なんでもミレーナーがまた別の友達の恋人である男性に接近しその男性と深い仲になっていたそうなのだ。それによってルーレスとミレーナーの関係は壊れてしまった。耳にした話によれば、一年ももたず、という感じだったようだ。

 ミレーナーはその後恋仲風になった怪しい男に騙されて売り飛ばされてしまい、人間の尊厳すらも奪われて道具として生きなくてはならないこととなってしまったそう。
 一方ルーレスはというと、女性不信になってしまい、女性と軽く接するだけで酷い蕁麻疹を発症するようになってしまったそうで――彼には女性と共に生きる未来はなくなってしまった。

 私を傷つけた二人には、明るい未来など訪れない。


◆終わり◆
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

開発者を大事にしない国は滅びるのです。常識でしょう?

ノ木瀬 優
恋愛
新しい魔道具を開発して、順調に商会を大きくしていったリリア=フィミール。しかし、ある時から、開発した魔道具を複製して販売されるようになってしまう。特許権の侵害を訴えても、相手の背後には王太子がh控えており、特許庁の対応はひどいものだった。 そんな中、リリアはとある秘策を実行する。 全3話。本日中に完結予定です。設定ゆるゆるなので、軽い気持ちで読んで頂けたら幸いです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

悪役令嬢(濡れ衣)は怒ったお兄ちゃんが一番怖い

下菊みこと
恋愛
お兄ちゃん大暴走。 小説家になろう様でも投稿しています。

プリンセス・プリンス 〜名もなき者たちの戦い〜

四季
恋愛
フレイヤ・アズリベル——彼女の記憶には父も母も存在しない。 彼女にとっての心の支えは、育ててくれた祖母と『母が遺した』と言われているコンパクトだけ。 しかしその祖母も半年ほど前に亡くなってしまった。 大切な人を失った寂しさの中で生きていたフレイヤの前に、ある日、見知らぬ男女が現れる。 それをきっかけに彼女の人生は思わぬ方向へ進んでゆくことに——。 これは、定めゆえに戦い続ける、名もなきプリンセス・プリンスたちの物語。 ※2021.7.22~2022.7.16 に執筆したものです。

冤罪で追放された令嬢〜周囲の人間達は追放した大国に激怒しました〜

影茸
恋愛
王国アレスターレが強国となった立役者とされる公爵令嬢マーセリア・ラスレリア。 けれどもマーセリアはその知名度を危険視され、国王に冤罪をかけられ王国から追放されることになってしまう。 そしてアレスターレを強国にするため、必死に動き回っていたマーセリアは休暇気分で抵抗せず王国を去る。 ーーー だが、マーセリアの追放を周囲の人間は許さなかった。 ※一人称ですが、視点はころころ変わる予定です。視点が変わる時には題名にその人物の名前を書かせていただきます。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

処理中です...