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私は人は苦手です、しかし花はとても好きなのです。~舞い込んできた良縁は我が人生を大きく変えました~
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私は花を育てるのが好きだ。
人は苦手。
だって怖いから。
すぐに嫌なことを言ってきたりしてきたりする人間はどうしてもあまり好きにはなれない。
もちろん、良い人だっている。それは知っているし分かっている。でも、悪い人と巡り会ってしまう可能性だってどうしても排除できないわけで。それがとても恐ろしいから、出会いを避けてしまう傾向にあるのだ。
言葉を交わすことすらできない、とまではいかないけれど。
でもなるべく離れていたいのだ。
そんな私の心のオアシスこそが花なのである。
花は私を傷つけない。
だから好き。
そして、ただぼんやり眺めているだけで癒されるので、それも良い点である。
かつて私には婚約者がいた。
彼の名はルーレス。
当時の私は彼のことを愛していた。
……でも彼は私を切り捨てた。
一度だけ会った私の友人であるミレーナーとルーレスは浮気して、そして、その果てに己の罪をごまかすため一方的に婚約破棄してきたのである。
その出来事もまた、私の人嫌いをぐんと育てた。
……まぁもう過去の話だしすべて過ぎ去ったことなのでどうでもいいことなのだが。
ただ、あの時受けたショックによる傷は、今もこの胸に残っている。
「ああ今日も綺麗だなぁ」
花を眺めて、呟く。
誰にも届かない声。
でもそれでいい。
きっと花たちは聞いてくれているだろうから。
「元気に育ってね」
私にはもう恋とか愛とか結婚とかは無理かもしれない。
でもそうなってしまったならそれもまた運命、そういうものだろう。
人と生きない人生、それが定めであるのだとしたら、私はそれを受け入れる。
幸い両親は私の心を理解してくれているのでここでこのまま生きてゆくことは可能だ。だからそれでもいい。そういう運命なのであれば、それが神の決定であるのなら、私はそれに抗うことはしない。
◆
二十五歳の春、私は、齢二十六という若き領主であるシーデルーと結婚した。
彼との出会いはうちの前。
庭で花の世話をしている時にたまたま通りかかった彼が声をかけてくれ、お互いに花好きであったこともあり一気に仲良くなった。
そして結婚にまで至ったのである。
花が連れてきてくれた縁。
今はそれを何よりも愛おしく思っている。
人は苦手、それは今も変わらなくて。けれどもシーデルーに関しては苦手ではない。共通の話題があるからだろうか、会話していても飽きないし沈黙が訪れてしまうといったこともない。彼と一緒にいる時は穏やかな心のままでいられる。
ちなみにルーレスとミレーナーはあの後すぐに破局したそう。
なんでもミレーナーがまた別の友達の恋人である男性に接近しその男性と深い仲になっていたそうなのだ。それによってルーレスとミレーナーの関係は壊れてしまった。耳にした話によれば、一年ももたず、という感じだったようだ。
ミレーナーはその後恋仲風になった怪しい男に騙されて売り飛ばされてしまい、人間の尊厳すらも奪われて道具として生きなくてはならないこととなってしまったそう。
一方ルーレスはというと、女性不信になってしまい、女性と軽く接するだけで酷い蕁麻疹を発症するようになってしまったそうで――彼には女性と共に生きる未来はなくなってしまった。
私を傷つけた二人には、明るい未来など訪れない。
◆終わり◆
人は苦手。
だって怖いから。
すぐに嫌なことを言ってきたりしてきたりする人間はどうしてもあまり好きにはなれない。
もちろん、良い人だっている。それは知っているし分かっている。でも、悪い人と巡り会ってしまう可能性だってどうしても排除できないわけで。それがとても恐ろしいから、出会いを避けてしまう傾向にあるのだ。
言葉を交わすことすらできない、とまではいかないけれど。
でもなるべく離れていたいのだ。
そんな私の心のオアシスこそが花なのである。
花は私を傷つけない。
だから好き。
そして、ただぼんやり眺めているだけで癒されるので、それも良い点である。
かつて私には婚約者がいた。
彼の名はルーレス。
当時の私は彼のことを愛していた。
……でも彼は私を切り捨てた。
一度だけ会った私の友人であるミレーナーとルーレスは浮気して、そして、その果てに己の罪をごまかすため一方的に婚約破棄してきたのである。
その出来事もまた、私の人嫌いをぐんと育てた。
……まぁもう過去の話だしすべて過ぎ去ったことなのでどうでもいいことなのだが。
ただ、あの時受けたショックによる傷は、今もこの胸に残っている。
「ああ今日も綺麗だなぁ」
花を眺めて、呟く。
誰にも届かない声。
でもそれでいい。
きっと花たちは聞いてくれているだろうから。
「元気に育ってね」
私にはもう恋とか愛とか結婚とかは無理かもしれない。
でもそうなってしまったならそれもまた運命、そういうものだろう。
人と生きない人生、それが定めであるのだとしたら、私はそれを受け入れる。
幸い両親は私の心を理解してくれているのでここでこのまま生きてゆくことは可能だ。だからそれでもいい。そういう運命なのであれば、それが神の決定であるのなら、私はそれに抗うことはしない。
◆
二十五歳の春、私は、齢二十六という若き領主であるシーデルーと結婚した。
彼との出会いはうちの前。
庭で花の世話をしている時にたまたま通りかかった彼が声をかけてくれ、お互いに花好きであったこともあり一気に仲良くなった。
そして結婚にまで至ったのである。
花が連れてきてくれた縁。
今はそれを何よりも愛おしく思っている。
人は苦手、それは今も変わらなくて。けれどもシーデルーに関しては苦手ではない。共通の話題があるからだろうか、会話していても飽きないし沈黙が訪れてしまうといったこともない。彼と一緒にいる時は穏やかな心のままでいられる。
ちなみにルーレスとミレーナーはあの後すぐに破局したそう。
なんでもミレーナーがまた別の友達の恋人である男性に接近しその男性と深い仲になっていたそうなのだ。それによってルーレスとミレーナーの関係は壊れてしまった。耳にした話によれば、一年ももたず、という感じだったようだ。
ミレーナーはその後恋仲風になった怪しい男に騙されて売り飛ばされてしまい、人間の尊厳すらも奪われて道具として生きなくてはならないこととなってしまったそう。
一方ルーレスはというと、女性不信になってしまい、女性と軽く接するだけで酷い蕁麻疹を発症するようになってしまったそうで――彼には女性と共に生きる未来はなくなってしまった。
私を傷つけた二人には、明るい未来など訪れない。
◆終わり◆
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