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婚約者に対して無能などと平気で言える彼は正直少しどうかしていると思います。~姉の男を奪って満足そうだった妹は酷い目に遭ったようです~
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「お前、ほんと無能だよな」
婚約者エーゲルバイドの口癖はそんなものだった。
彼は私の顔を見るたびにそんなことを言ってくる。
心を傷つけるような言葉。
自信を失わせるような言葉。
彼はそういったものを平然と並べてくるのである。
そんな彼からある日告げられたのは――。
「お前との婚約、破棄とする」
――そんな言葉であった。
しかも、その時エーゲルバイドの隣には、私の三つ年下の妹アイリシアがいて。
「俺は彼女を愛している。彼女とはとても美しく有能だからな、俺に相応しい女性と言えるだろう」
アイリシアは勝ち誇ったような嬉しげな顔でこちらを見ている。
どうして……?
なぜこんなことに……?
いや、まぁ、エーゲルバイドを奪われたとしてもそれはどうでもいいのだけれど。
エーゲルバイドの性格には日々苦労させられている。
それゆえ彼と離れることとなったとしてもべつにどうでもいい。
いや、むしろ、その方が助かるくらいで。
「だからお前なんかとはもう続けていかない。当たり前だろう? 俺は愛した人を選ぶ、それは俺が幸せに生きるためだ。俺は一旦婚約したからといって妥協しての結婚はしない」
こうして私は婚約破棄されたのだった。
しかも、婚約者を妹に盗られる、といった形での婚約破棄であった。
◆
妹アイリシアはあの後エーゲルバイドと結婚した。
しかし夫婦になった途端散々暴言を吐かれるようになっていったようだった。
エーゲルバイドは彼女に対してであってもモラハラ的言動を繰り返していたようなのだ。
無能、なんて言われることも、多々あったようだ。
あれは私が相手だったからではなかったのか……。
どうやらエーゲルバイドは誰にでもそういうことを言う人間だったよう。ということは、無能無能と言われていてもそれは私が本当に無能だったからではないようである。
単にエーゲルバイドが悪人だっただけのようだ。
で、アイリシアは、結婚後一年も経たず心を病んでしまったそう。
かつての心身共に健康な彼女はもうこの世には存在しない。
◆
あれから数年が経った。
アイリシアはエーゲルバイドと離婚した。
というのも彼女の状態が著しく悪化したために親がエーゲルバイドと引き離すことを選んだのだ。
そうして実家へ戻ってきたアイリシアだが、穏やかに過ごせる環境に帰ってきてもなお彼女は壊れきっていた。
今やアイリシアは置物のようなものだ。
常に天井をぼんやり見上げていて、言葉は発せず、誰かと意思疎通することなど到底不可能な状態である。
一方エーゲルバイドはというと、離婚後「奥さんの精神を暴言で壊した」という話が出回ってしまったために年頃の女性たちから一切相手にされなくなり、結婚を望みながらも今もまだ独りといった状態らしい。
でもその方が良いと思う。
だって、彼と関わっても傷つけられるだけだ。
誰であろうともそんな無駄なことに時間を使う必要はない――経験者として私はそう思っている。
ちなみに私はというと、今は、良き夫を得られて穏やかな日々を純粋に楽しめている。
大切な人、思いやりを持って接し合える人、そういう人と人生という道を歩めることに感謝して。
私たちはこれからも幸せに生きてゆく。
◆終わり◆
婚約者エーゲルバイドの口癖はそんなものだった。
彼は私の顔を見るたびにそんなことを言ってくる。
心を傷つけるような言葉。
自信を失わせるような言葉。
彼はそういったものを平然と並べてくるのである。
そんな彼からある日告げられたのは――。
「お前との婚約、破棄とする」
――そんな言葉であった。
しかも、その時エーゲルバイドの隣には、私の三つ年下の妹アイリシアがいて。
「俺は彼女を愛している。彼女とはとても美しく有能だからな、俺に相応しい女性と言えるだろう」
アイリシアは勝ち誇ったような嬉しげな顔でこちらを見ている。
どうして……?
なぜこんなことに……?
いや、まぁ、エーゲルバイドを奪われたとしてもそれはどうでもいいのだけれど。
エーゲルバイドの性格には日々苦労させられている。
それゆえ彼と離れることとなったとしてもべつにどうでもいい。
いや、むしろ、その方が助かるくらいで。
「だからお前なんかとはもう続けていかない。当たり前だろう? 俺は愛した人を選ぶ、それは俺が幸せに生きるためだ。俺は一旦婚約したからといって妥協しての結婚はしない」
こうして私は婚約破棄されたのだった。
しかも、婚約者を妹に盗られる、といった形での婚約破棄であった。
◆
妹アイリシアはあの後エーゲルバイドと結婚した。
しかし夫婦になった途端散々暴言を吐かれるようになっていったようだった。
エーゲルバイドは彼女に対してであってもモラハラ的言動を繰り返していたようなのだ。
無能、なんて言われることも、多々あったようだ。
あれは私が相手だったからではなかったのか……。
どうやらエーゲルバイドは誰にでもそういうことを言う人間だったよう。ということは、無能無能と言われていてもそれは私が本当に無能だったからではないようである。
単にエーゲルバイドが悪人だっただけのようだ。
で、アイリシアは、結婚後一年も経たず心を病んでしまったそう。
かつての心身共に健康な彼女はもうこの世には存在しない。
◆
あれから数年が経った。
アイリシアはエーゲルバイドと離婚した。
というのも彼女の状態が著しく悪化したために親がエーゲルバイドと引き離すことを選んだのだ。
そうして実家へ戻ってきたアイリシアだが、穏やかに過ごせる環境に帰ってきてもなお彼女は壊れきっていた。
今やアイリシアは置物のようなものだ。
常に天井をぼんやり見上げていて、言葉は発せず、誰かと意思疎通することなど到底不可能な状態である。
一方エーゲルバイドはというと、離婚後「奥さんの精神を暴言で壊した」という話が出回ってしまったために年頃の女性たちから一切相手にされなくなり、結婚を望みながらも今もまだ独りといった状態らしい。
でもその方が良いと思う。
だって、彼と関わっても傷つけられるだけだ。
誰であろうともそんな無駄なことに時間を使う必要はない――経験者として私はそう思っている。
ちなみに私はというと、今は、良き夫を得られて穏やかな日々を純粋に楽しめている。
大切な人、思いやりを持って接し合える人、そういう人と人生という道を歩めることに感謝して。
私たちはこれからも幸せに生きてゆく。
◆終わり◆
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