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自分の得意を認めてくれる人に巡り会えると幸せですよね。~これからは愛されて生きてゆきます~
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「ほぅらああぁぁぁぁ! どっせい! どっりゃあああぁぁぁぁぁぁッ!! とぅおるりゃあぁぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁ!!」
私メリーニはどこにでもいる普通の娘だ。
けれども少しだけ普通から外れているところもあって、それは、一般的な同年齢の女性たちより怪力であるというところである。
それを理由にこれまで色々虐められてきた。さすがに直接絡んできたり嫌がらせをしてきたりといった人はいなかったけれど。でも「あの娘普通じゃないよね」「野蛮すぎ」なんてことをこそこそ言われるといったようなことは多々あって。友人になれたと思っていた人たちから急に無視されるようになったことだってあった。
で、そんなだから、私はいつからか冒険者という仕事に打ち込むようになった。
剣を振る。
棍棒を振り回す。
危険な仕事だ、魔物と戦うのは。
けれども人と接するよりかは気が楽だった。
だって、魔物と戦う時には遠慮なんて少しも要らない。手加減する必要はないし、本気で暴れても批判されないし。だから冒険者というその職こそが私にとっては転職だったのだ。
――ただ。
「メリーニ、お前、本当に仕事辞めないのか?」
「はい。辞めないつもりです。できる限り、身体が動く限り、続けていきたいと思っています」
その仕事を愛していたがために。
「そっか。じゃ、婚約は破棄な」
婚約者の彼ローウェルズには捨てられてしまった。
親が協力してくれたことで初めてできた婚約者。
でもそのチャンスを私は有効活用しきれなかった。
せっかく両親が色々力を貸してくれたのに、話を駄目にしてしまった……。
「ま、野獣女ライフをせいぜい楽しめよな」
ああ、私、駄目だな本当に。
せっかくの機会、せっかくの縁、それさえも駄目にして壊れさせてしまうなんて……。
この件ではさすがに少し落ち込んだ。
己の駄目なところを再確認してしまったかのようで。
……でも好きなんだもの、仕事が。
ただ、幸い両親は「仕方ないわよ」「まだまだ家にいていいぞ」と理解を示す言葉をかけてくれたので、実家に居づらくなることはなかった。
私はそれからも真っ直ぐに仕事に取り組んだ。
「どりゃああああ! せい! ふっ、とぅおるりゃあぁぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁあ!! はぁっ!!」
だって私にできることはこれしかない。
「はぁ! はぁ! せい! ほぅ! とぅりゃあああああ!」
だから私は働き続ける。
どこまでも突き進む。
◆
あれから三年半が経った。
私は日々の冒険者としての成果を王子ルットルに認められ、彼より求婚を受け、やがて結婚するに至った。
王子との関係なんてあるわけがない、そう思っていた。いや、そもそも、そんな展開なんて想像してはいなかったのだ。王子との関わり、なんて、一般人の私にあるわけがない。だからまったくもって想像していなかったのだ。
でもその縁は当たり前であるかのような顔をしてやって来て。
そうして私は新しい幸福へと誘われた。
ルットル王子はローウェルズやこれまで出会ってきた同性の人たちとは明らかに違っていて、私を野蛮とか何とか言ったり傷つけてきたりすることはなかった。
むしろとても大切にしてもらえている。
ルットル王子、彼との出会いは、私にとって何よりも偉大な出会いであった。
私はこれからも彼と共に生きてゆきたい。
そして愛を注いでくれた彼に最大の恩返しをしたいのだ。
一方ローウェルズはというと、あの婚約破棄から二ヶ月半ほど経った頃に魔物の群れに襲われて死亡した。
その日彼は普段通り家にいたそうだが、凶暴な魔物の群れが町へ現れ、それらに襲われ身を引き裂かれて亡くなったのだそうだ。
◆終わり◆
私メリーニはどこにでもいる普通の娘だ。
けれども少しだけ普通から外れているところもあって、それは、一般的な同年齢の女性たちより怪力であるというところである。
それを理由にこれまで色々虐められてきた。さすがに直接絡んできたり嫌がらせをしてきたりといった人はいなかったけれど。でも「あの娘普通じゃないよね」「野蛮すぎ」なんてことをこそこそ言われるといったようなことは多々あって。友人になれたと思っていた人たちから急に無視されるようになったことだってあった。
で、そんなだから、私はいつからか冒険者という仕事に打ち込むようになった。
剣を振る。
棍棒を振り回す。
危険な仕事だ、魔物と戦うのは。
けれども人と接するよりかは気が楽だった。
だって、魔物と戦う時には遠慮なんて少しも要らない。手加減する必要はないし、本気で暴れても批判されないし。だから冒険者というその職こそが私にとっては転職だったのだ。
――ただ。
「メリーニ、お前、本当に仕事辞めないのか?」
「はい。辞めないつもりです。できる限り、身体が動く限り、続けていきたいと思っています」
その仕事を愛していたがために。
「そっか。じゃ、婚約は破棄な」
婚約者の彼ローウェルズには捨てられてしまった。
親が協力してくれたことで初めてできた婚約者。
でもそのチャンスを私は有効活用しきれなかった。
せっかく両親が色々力を貸してくれたのに、話を駄目にしてしまった……。
「ま、野獣女ライフをせいぜい楽しめよな」
ああ、私、駄目だな本当に。
せっかくの機会、せっかくの縁、それさえも駄目にして壊れさせてしまうなんて……。
この件ではさすがに少し落ち込んだ。
己の駄目なところを再確認してしまったかのようで。
……でも好きなんだもの、仕事が。
ただ、幸い両親は「仕方ないわよ」「まだまだ家にいていいぞ」と理解を示す言葉をかけてくれたので、実家に居づらくなることはなかった。
私はそれからも真っ直ぐに仕事に取り組んだ。
「どりゃああああ! せい! ふっ、とぅおるりゃあぁぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁあ!! はぁっ!!」
だって私にできることはこれしかない。
「はぁ! はぁ! せい! ほぅ! とぅりゃあああああ!」
だから私は働き続ける。
どこまでも突き進む。
◆
あれから三年半が経った。
私は日々の冒険者としての成果を王子ルットルに認められ、彼より求婚を受け、やがて結婚するに至った。
王子との関係なんてあるわけがない、そう思っていた。いや、そもそも、そんな展開なんて想像してはいなかったのだ。王子との関わり、なんて、一般人の私にあるわけがない。だからまったくもって想像していなかったのだ。
でもその縁は当たり前であるかのような顔をしてやって来て。
そうして私は新しい幸福へと誘われた。
ルットル王子はローウェルズやこれまで出会ってきた同性の人たちとは明らかに違っていて、私を野蛮とか何とか言ったり傷つけてきたりすることはなかった。
むしろとても大切にしてもらえている。
ルットル王子、彼との出会いは、私にとって何よりも偉大な出会いであった。
私はこれからも彼と共に生きてゆきたい。
そして愛を注いでくれた彼に最大の恩返しをしたいのだ。
一方ローウェルズはというと、あの婚約破棄から二ヶ月半ほど経った頃に魔物の群れに襲われて死亡した。
その日彼は普段通り家にいたそうだが、凶暴な魔物の群れが町へ現れ、それらに襲われ身を引き裂かれて亡くなったのだそうだ。
◆終わり◆
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