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私を捨て他の女を取った裏切り者婚約者に対して一番怒ったのは妹でした。~彼女は怒らせると怖い人ですのでご注意を~
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「貴様のようなぱっとしないやつはもうどうでもいい。なぜか? 簡単なことだ。真実の愛に出会ったから、気づいたから。ただそれだけだ!」
ある夏の日、婚約者オーヴェンハイドは一人の女性を連れて私の前へ現れた。
「俺は彼女だけを愛している。だからもう貴様との婚約などどうでもいいし、何なら今すぐ消し飛ばしてしまいたいほどの気持ちでいる」
「え……」
「よって、貴様との婚約は破棄とする!!」
女性は胸の前辺りにおいた両手でオーヴェンハイドの左腕をそっと掴んでいた。しかもオーヴェンハイドが彼女へ目をやるのと同時に上目遣いで彼を見上げる。
な、なんてあざといんだ……。
そういうところが気に入ったのかも?
「婚約破棄だなんて、本気なのですか」
「当たり前だろう。冗談で、なんて、ふざけて、なんて、そんなことを言うはずもない」
「まぁ……そうですよね」
「貴様は華がないしセンスも感じない、加えて奉仕の心だってない。健全過ぎるところも悪印象だ。とにかく慎まし過ぎる、悪い意味で、な。そういうところすべてを含めて考えた時、俺が貴様を愛する未来はないと判断した」
説明はもういいか? なんて言って、彼は隣にいる女性をそっと抱き締めた。
「そういうことなので、ではこれにて」
彼は最後それだけ言って去っていった。
オーヴェンハイドと女性は肩を寄せ合って歩いていく。
まるで私にその仲の良さを見せつけるかのように。
◆
「何ですって!?」
話を聞いて誰よりも怒ったのは妹であった。
「お姉さまを裏切るなんて! 許せない……絶対に許せませんわ!」
彼女は見た目は少々意地悪そうだ。
しかしそれは顔だけである。
実際には正義感のある女性で、これまでだって大抵私の味方をしてくれていた――我が妹はそういう人である。
「オーヴェンハイド、あいつ、絶対痛い目に遭わせる……」
「いいのよ、もう、仕方ないの」
「けど! そんな身勝手な事情でお姉さまを切り捨てるなんて酷すぎますわ!」
彼女の怒りは収まらない。
誰が何を言ってもきっと落ち着かせることはできないだろう。
「わたくしが復讐して参りますわ」
――その後妹は本当にオーヴェンハイドらに復讐を行った。
魔法具を使い百人に分裂した妹はオーヴェンハイドとあの女を森へ誘いそこで数日にわたって追い掛け回した。
オーヴェンハイドらは気味の悪い出来事にすっかり疲れ弱ってしまったらしい。
そして最後は、隠し持っていたもう一つの魔道具を使い、ブラックホールを出現させてオーヴェンハイドを吸い込んだ。
また、その様子を見て怯える女に対しては、百人に分裂した状態で数時間にわたって暴言を聞かせ――精神崩壊にまで追い込んだ。
「お姉さま、すべては終わりましたわ」
「す、凄いわね……まさか本当に復讐するなんて……」
「褒めてくださいますか?」
「ま、まぁ、そうね、ありがとう」
妹だけは敵に回したくないと思ったのだった。
◆
あれから数年、私は、元狩人で現在は国境警備隊に所属し隊長をしている肉体派ながら知性もある優秀な男性と結婚した。
彼はいつも思いやりを持って接してくれる。
まさに紳士だ。
だからこそ、こちらも前向きに彼を支えたいと思える。
良い関係を築けていると思う。
初心を忘れず、いつまでも。
彼と共に歩んでゆきたい。
それが今の願いであり決意でもある。
◆終わり◆
ある夏の日、婚約者オーヴェンハイドは一人の女性を連れて私の前へ現れた。
「俺は彼女だけを愛している。だからもう貴様との婚約などどうでもいいし、何なら今すぐ消し飛ばしてしまいたいほどの気持ちでいる」
「え……」
「よって、貴様との婚約は破棄とする!!」
女性は胸の前辺りにおいた両手でオーヴェンハイドの左腕をそっと掴んでいた。しかもオーヴェンハイドが彼女へ目をやるのと同時に上目遣いで彼を見上げる。
な、なんてあざといんだ……。
そういうところが気に入ったのかも?
「婚約破棄だなんて、本気なのですか」
「当たり前だろう。冗談で、なんて、ふざけて、なんて、そんなことを言うはずもない」
「まぁ……そうですよね」
「貴様は華がないしセンスも感じない、加えて奉仕の心だってない。健全過ぎるところも悪印象だ。とにかく慎まし過ぎる、悪い意味で、な。そういうところすべてを含めて考えた時、俺が貴様を愛する未来はないと判断した」
説明はもういいか? なんて言って、彼は隣にいる女性をそっと抱き締めた。
「そういうことなので、ではこれにて」
彼は最後それだけ言って去っていった。
オーヴェンハイドと女性は肩を寄せ合って歩いていく。
まるで私にその仲の良さを見せつけるかのように。
◆
「何ですって!?」
話を聞いて誰よりも怒ったのは妹であった。
「お姉さまを裏切るなんて! 許せない……絶対に許せませんわ!」
彼女は見た目は少々意地悪そうだ。
しかしそれは顔だけである。
実際には正義感のある女性で、これまでだって大抵私の味方をしてくれていた――我が妹はそういう人である。
「オーヴェンハイド、あいつ、絶対痛い目に遭わせる……」
「いいのよ、もう、仕方ないの」
「けど! そんな身勝手な事情でお姉さまを切り捨てるなんて酷すぎますわ!」
彼女の怒りは収まらない。
誰が何を言ってもきっと落ち着かせることはできないだろう。
「わたくしが復讐して参りますわ」
――その後妹は本当にオーヴェンハイドらに復讐を行った。
魔法具を使い百人に分裂した妹はオーヴェンハイドとあの女を森へ誘いそこで数日にわたって追い掛け回した。
オーヴェンハイドらは気味の悪い出来事にすっかり疲れ弱ってしまったらしい。
そして最後は、隠し持っていたもう一つの魔道具を使い、ブラックホールを出現させてオーヴェンハイドを吸い込んだ。
また、その様子を見て怯える女に対しては、百人に分裂した状態で数時間にわたって暴言を聞かせ――精神崩壊にまで追い込んだ。
「お姉さま、すべては終わりましたわ」
「す、凄いわね……まさか本当に復讐するなんて……」
「褒めてくださいますか?」
「ま、まぁ、そうね、ありがとう」
妹だけは敵に回したくないと思ったのだった。
◆
あれから数年、私は、元狩人で現在は国境警備隊に所属し隊長をしている肉体派ながら知性もある優秀な男性と結婚した。
彼はいつも思いやりを持って接してくれる。
まさに紳士だ。
だからこそ、こちらも前向きに彼を支えたいと思える。
良い関係を築けていると思う。
初心を忘れず、いつまでも。
彼と共に歩んでゆきたい。
それが今の願いであり決意でもある。
◆終わり◆
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