103 / 103
彼は婚約者である私に対して心ない言葉ばかりかけてきます。~もうさすがに我慢できませんので、彼の悪行をばらすことにします~
しおりを挟む
我が婚約者ビフェロガートは王子でありながら女遊びが酷いうえ違法行為にまで手を出しておりさらに婚約者である私に対してやたらと暴言を吐いてくるという悪質な人物である。
「フィーナ! 貴様! 言っていたお菓子はまだ届いていないのか!」
「言っていたお菓子とは一体何でしょうか」
「何だと!? 言っただろう! 昨日! 明日届くからと! まさかもう忘れたというのか!?」
「お聞きしていません」
「クソが!! ――ああもうこれだから我が便所婚約者は。フィーナ、貴様、どれだけ役立たずなんだ!!」
こんな理不尽なことを言われることだって多々ある。
「貴様はとことん不細工だな」
「そうでしょうか?」
「ああそうだ! 俺が言っているんだから確かなことだよ、貴様は王国一の不細工女!」
「……ではなぜ婚約破棄しないのでしょう?」
「知るか! 婚約させられたのは俺の意思じゃない! カスがくだらんことを聞くな、今後何も発するな!」
散々な言われよう、ということだって、珍しいことではない。
ビフェロガートはとにかく暴言を吐くことが好きだ。そして私を侮辱することも。彼が私を手放さずにいるのは、恐らく、好き放題言えるサンドバッグ的存在が必要だからなのだろう。そうでなければとうに捨てているはず。なんせ少しも愛していないのだから。
そんなある日、あまりにも酷い言葉を並べられたので。
「ビフェロガートさん、それ以上暴言を吐かれるのであれば、私も叱るべき対応をします」
さすがに耐えられず反撃に出ることにした。
「何だと? ……貴様のような馬鹿に何ができる」
「情報を出すのです。世に。貴方が日夜行っている違法な取引について」
「な」
「ご自分のことですから、ご存知でしょう?」
私だって人間だ。心を持っている。何を言われても平気なわけではないし、何を言われても我慢して大人しくしていられるわけではない。
「な、何を……言い出すんだ。嘘を並べるな! 貴様のような愚かな女が俺の何を知っているというんだ。所詮くだらん脅しだろう!」
今になって慌て出すビフェロガート。
「いいえ。取引の証拠、こっそり集めていましたから」
そんな彼には笑みを向けてやろう。
そう、どこまでも綺麗な、純粋な笑みを。
「ほ、本気で言って……!?」
「ええ」
「ふざけるな! ふざけるなふざけるな、ふざけるなあああああああ!!」
急に襲いかかってくるビフェロガート。
私は素早く部屋から逃げ出した。
ここから元の関係に戻ることはできないだろう。
すべてを終わらせる覚悟をしたようなものだ、ここまでなってしまった。
でももういい。
心ない言葉に苦しまされ続けるくらいなら、彼の婚約者なんてやめてやる。
その後私は実家へ帰り、それから、ビフェロガートの悪行について複数の新聞社に流した。
それによりビフェロガートが暴かれてゆくこととなり――やがて彼の悪しき行いの多くが明るみに出ることとなって、彼の民からの評価は大幅に下がることとなった。
その後ビフェロガートは逮捕された。
それと同時に婚約は破棄に。
だがそれは仕方ないことだ。
罪人として牢屋送りになった人との婚約を継続することなどこの国においては不可能なのだから。
それからのビフェロガートの人生は生きている虚しさをとことん感じるようなものだったよう。でもそれを聞いても可哀想とはちっとも思わなかった。むしろざまぁみろと思うくらい。だって彼はこれまでずっと私を傷つけ続けてきたのだ、一度くらい自分が痛い目に遭えばいい。
王子ビフェロガートの評判は地に堕ちた。
民に尊敬される彼は、もういない。
◆
ビフェロガートと終わってから数年、私は、私のことを心の底から愛してくれる真っ直ぐで純真な青年と巡り会えた。
そして結婚に至った。
私たちは共に歩むことを決意した。
でもきっと大丈夫。
だって彼は心ない言葉を発したりはしないから。
彼となら光ある未来へ歩んでゆけるだろう。
◆終わり◆
「フィーナ! 貴様! 言っていたお菓子はまだ届いていないのか!」
「言っていたお菓子とは一体何でしょうか」
「何だと!? 言っただろう! 昨日! 明日届くからと! まさかもう忘れたというのか!?」
「お聞きしていません」
「クソが!! ――ああもうこれだから我が便所婚約者は。フィーナ、貴様、どれだけ役立たずなんだ!!」
こんな理不尽なことを言われることだって多々ある。
「貴様はとことん不細工だな」
「そうでしょうか?」
「ああそうだ! 俺が言っているんだから確かなことだよ、貴様は王国一の不細工女!」
「……ではなぜ婚約破棄しないのでしょう?」
「知るか! 婚約させられたのは俺の意思じゃない! カスがくだらんことを聞くな、今後何も発するな!」
散々な言われよう、ということだって、珍しいことではない。
ビフェロガートはとにかく暴言を吐くことが好きだ。そして私を侮辱することも。彼が私を手放さずにいるのは、恐らく、好き放題言えるサンドバッグ的存在が必要だからなのだろう。そうでなければとうに捨てているはず。なんせ少しも愛していないのだから。
そんなある日、あまりにも酷い言葉を並べられたので。
「ビフェロガートさん、それ以上暴言を吐かれるのであれば、私も叱るべき対応をします」
さすがに耐えられず反撃に出ることにした。
「何だと? ……貴様のような馬鹿に何ができる」
「情報を出すのです。世に。貴方が日夜行っている違法な取引について」
「な」
「ご自分のことですから、ご存知でしょう?」
私だって人間だ。心を持っている。何を言われても平気なわけではないし、何を言われても我慢して大人しくしていられるわけではない。
「な、何を……言い出すんだ。嘘を並べるな! 貴様のような愚かな女が俺の何を知っているというんだ。所詮くだらん脅しだろう!」
今になって慌て出すビフェロガート。
「いいえ。取引の証拠、こっそり集めていましたから」
そんな彼には笑みを向けてやろう。
そう、どこまでも綺麗な、純粋な笑みを。
「ほ、本気で言って……!?」
「ええ」
「ふざけるな! ふざけるなふざけるな、ふざけるなあああああああ!!」
急に襲いかかってくるビフェロガート。
私は素早く部屋から逃げ出した。
ここから元の関係に戻ることはできないだろう。
すべてを終わらせる覚悟をしたようなものだ、ここまでなってしまった。
でももういい。
心ない言葉に苦しまされ続けるくらいなら、彼の婚約者なんてやめてやる。
その後私は実家へ帰り、それから、ビフェロガートの悪行について複数の新聞社に流した。
それによりビフェロガートが暴かれてゆくこととなり――やがて彼の悪しき行いの多くが明るみに出ることとなって、彼の民からの評価は大幅に下がることとなった。
その後ビフェロガートは逮捕された。
それと同時に婚約は破棄に。
だがそれは仕方ないことだ。
罪人として牢屋送りになった人との婚約を継続することなどこの国においては不可能なのだから。
それからのビフェロガートの人生は生きている虚しさをとことん感じるようなものだったよう。でもそれを聞いても可哀想とはちっとも思わなかった。むしろざまぁみろと思うくらい。だって彼はこれまでずっと私を傷つけ続けてきたのだ、一度くらい自分が痛い目に遭えばいい。
王子ビフェロガートの評判は地に堕ちた。
民に尊敬される彼は、もういない。
◆
ビフェロガートと終わってから数年、私は、私のことを心の底から愛してくれる真っ直ぐで純真な青年と巡り会えた。
そして結婚に至った。
私たちは共に歩むことを決意した。
でもきっと大丈夫。
だって彼は心ない言葉を発したりはしないから。
彼となら光ある未来へ歩んでゆけるだろう。
◆終わり◆
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
学園は悪役令嬢に乗っ取られた!
こもろう
恋愛
王立魔法学園。その学園祭の初日の開会式で、事件は起こった。
第一王子アレクシスとその側近たち、そして彼らにエスコートされた男爵令嬢が壇上に立ち、高々とアレクシス王子と侯爵令嬢ユーフェミアの婚約を破棄すると告げたのだ。ユーフェミアを断罪しはじめる彼ら。しかしユーフェミアの方が上手だった?
悪役にされた令嬢が、王子たちにひたすらざまあ返しをするイベントが、今始まる。
登場人物に真っ当な人間はなし。ご都合主義展開。
妹が「この世界って乙女ゲーじゃん!」とかわけのわからないことを言い出した
無色
恋愛
「この世界って乙女ゲーじゃん!」と言い出した、転生者を名乗る妹フェノンは、ゲーム知識を駆使してハーレムを作ろうとするが……彼女が狙った王子アクシオは、姉メイティアの婚約者だった。
静かな姉の中に眠る“狂気”に気付いたとき、フェノンは……
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
開発者を大事にしない国は滅びるのです。常識でしょう?
ノ木瀬 優
恋愛
新しい魔道具を開発して、順調に商会を大きくしていったリリア=フィミール。しかし、ある時から、開発した魔道具を複製して販売されるようになってしまう。特許権の侵害を訴えても、相手の背後には王太子がh控えており、特許庁の対応はひどいものだった。
そんな中、リリアはとある秘策を実行する。
全3話。本日中に完結予定です。設定ゆるゆるなので、軽い気持ちで読んで頂けたら幸いです。
聖女は支配する!あら?どうして他の聖女の皆さんは気付かないのでしょうか?早く目を覚ましなさい!我々こそが支配者だと言う事に。
naturalsoft
恋愛
この短編は3部構成となっております。1話完結型です。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★
オラクル聖王国の筆頭聖女であるシオンは疑問に思っていた。
癒やしを求めている民を後回しにして、たいした怪我や病気でもない貴族のみ癒やす仕事に。
そして、身体に負担が掛かる王国全体を覆う結界の維持に、当然だと言われて御礼すら言われない日々に。
「フフフッ、ある時気付いただけですわ♪」
ある時、白い紙にインクが滲むかの様に、黒く染まっていく聖女がそこにはいた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる