異世界恋愛作品集 ~さくっと読める!? 大変なことやややこしいことがあっても乗り越えて幸せを掴みます~

四季

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彼は婚約者である私に対して心ない言葉ばかりかけてきます。~もうさすがに我慢できませんので、彼の悪行をばらすことにします~

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 我が婚約者ビフェロガートは王子でありながら女遊びが酷いうえ違法行為にまで手を出しておりさらに婚約者である私に対してやたらと暴言を吐いてくるという悪質な人物である。

「フィーナ! 貴様! 言っていたお菓子はまだ届いていないのか!」
「言っていたお菓子とは一体何でしょうか」
「何だと!? 言っただろう! 昨日! 明日届くからと! まさかもう忘れたというのか!?」
「お聞きしていません」
「クソが!! ――ああもうこれだから我が便所婚約者は。フィーナ、貴様、どれだけ役立たずなんだ!!」

 こんな理不尽なことを言われることだって多々ある。

「貴様はとことん不細工だな」
「そうでしょうか?」
「ああそうだ! 俺が言っているんだから確かなことだよ、貴様は王国一の不細工女!」
「……ではなぜ婚約破棄しないのでしょう?」
「知るか! 婚約させられたのは俺の意思じゃない! カスがくだらんことを聞くな、今後何も発するな!」

 散々な言われよう、ということだって、珍しいことではない。

 ビフェロガートはとにかく暴言を吐くことが好きだ。そして私を侮辱することも。彼が私を手放さずにいるのは、恐らく、好き放題言えるサンドバッグ的存在が必要だからなのだろう。そうでなければとうに捨てているはず。なんせ少しも愛していないのだから。

 そんなある日、あまりにも酷い言葉を並べられたので。

「ビフェロガートさん、それ以上暴言を吐かれるのであれば、私も叱るべき対応をします」

 さすがに耐えられず反撃に出ることにした。

「何だと? ……貴様のような馬鹿に何ができる」
「情報を出すのです。世に。貴方が日夜行っている違法な取引について」
「な」
「ご自分のことですから、ご存知でしょう?」

 私だって人間だ。心を持っている。何を言われても平気なわけではないし、何を言われても我慢して大人しくしていられるわけではない。

「な、何を……言い出すんだ。嘘を並べるな! 貴様のような愚かな女が俺の何を知っているというんだ。所詮くだらん脅しだろう!」

 今になって慌て出すビフェロガート。

「いいえ。取引の証拠、こっそり集めていましたから」

 そんな彼には笑みを向けてやろう。

 そう、どこまでも綺麗な、純粋な笑みを。

「ほ、本気で言って……!?」
「ええ」
「ふざけるな! ふざけるなふざけるな、ふざけるなあああああああ!!」

 急に襲いかかってくるビフェロガート。

 私は素早く部屋から逃げ出した。

 ここから元の関係に戻ることはできないだろう。
 すべてを終わらせる覚悟をしたようなものだ、ここまでなってしまった。

 でももういい。
 心ない言葉に苦しまされ続けるくらいなら、彼の婚約者なんてやめてやる。

 その後私は実家へ帰り、それから、ビフェロガートの悪行について複数の新聞社に流した。

 それによりビフェロガートが暴かれてゆくこととなり――やがて彼の悪しき行いの多くが明るみに出ることとなって、彼の民からの評価は大幅に下がることとなった。

 その後ビフェロガートは逮捕された。

 それと同時に婚約は破棄に。
 だがそれは仕方ないことだ。

 罪人として牢屋送りになった人との婚約を継続することなどこの国においては不可能なのだから。

 それからのビフェロガートの人生は生きている虚しさをとことん感じるようなものだったよう。でもそれを聞いても可哀想とはちっとも思わなかった。むしろざまぁみろと思うくらい。だって彼はこれまでずっと私を傷つけ続けてきたのだ、一度くらい自分が痛い目に遭えばいい。

 王子ビフェロガートの評判は地に堕ちた。

 民に尊敬される彼は、もういない。


 ◆


 ビフェロガートと終わってから数年、私は、私のことを心の底から愛してくれる真っ直ぐで純真な青年と巡り会えた。

 そして結婚に至った。

 私たちは共に歩むことを決意した。

 でもきっと大丈夫。
 だって彼は心ない言葉を発したりはしないから。

 彼となら光ある未来へ歩んでゆけるだろう。


◆終わり◆
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