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前編
しおりを挟む歴史ある良家の令嬢であるレイティアはとても美しい女性であった。
儚い美女。
誰もが良い意味で彼女をそう言った。
生まれつき少々身体が弱かった彼女は、そのガラス細工のような銀の髪もあいまって、皆からは乱雑に扱えば壊れてしまうといったようなイメージを持たれていた。
だが、レイティアの婚約者である青年アルフグリットは、繊細さを感じるレイティアに対し不満を持っていた。
もっと遊びたい。
もっといちゃいちゃしたい。
彼はそう考えていたのである。
それで彼は浮気を繰り返した。
しかも相手は複数人。
数人の女の中から毎日のようにとっかえひっかえいちゃつく遊び相手としていたのである。
婚約者が順序を守る面白みのない人だから仕方ない、浮気はすべて彼女のせい――そんなことを言いながら。
だがやがてその事実がレイティアの父親の知るところとなり。
「あの男! レイティアがいながら女遊びばかりしているとはどういうことだ! 許さん!」
レイティアの父親は激怒、二人の婚約を破棄とした。
好き放題していたアルフグリットはレイティアの名で慰謝料を請求され、婚約破棄されるのみならず償いのお金を支払わなくてはならないこととなってしまったのだった。
ただそれでもアルフグリットは反省はしておらず、周囲には「金目当てだったんだ、あいつ」「全部そもそもはあいつのせいなのにさ」などと言っていた――しかしある時レイティアの濃いファンにそれを聞かれてしまい、そのファンに襲われてアルフグリットは死亡した。
レイティアは浮気されたことに傷ついていたはずなのにそれでもなおアルフグリットの死を悲しんだ。
ただ、いつまでも絶望にいるわけではなく。
仕方がなかったのだ、と、やがてその運命を受け入れるようになった。
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