幼馴染みの言うことを信じ込んでいるようですが、それ、嘘ですよ。

前編

「君はリリーナを虐めていたそうだね。驚いたよ、まさかそんなに性格悪だったとはね」

　私、エリザベス・フォリーは、婚約者ハイドンから急にそんなことを言われた。

　それも、公の場で。

　それはある晩餐会でのこと。ハイドンは突如そんなことを言ってきた。それも、わざわざ周りに聞こえるように、だ。どこまでも性格が悪い。もっとも、ハイドンはそれを望んで、敢えてここで話を切り出したのだろうが。

　皆私に好奇の目を向ける。
　だが無理もない。
　そんな話が始まったら気にもなるだろう。

　ちなみに、リリーナというのはハイドンの幼馴染みの女性である。

「信じられないよ。でもリリーナが言うのだから事実なのだろうね」
「心当たりがありません」
「うるさい！　言い逃れしようとしても無駄だよ。もうすべて知っているからね」

　その時、私の背後から一人の青年が現れた。