婚約者が女遊びにはまった挙句婚約破棄してきました。~まぁ結果的にはその方が良かったのかもしれないですね~

四季

文字の大きさ
3 / 3

3話

しおりを挟む

 ◆


「ママ! この木の実食べていいの!?」
「ええ、いいのよ」

 あれから八年ほどが経過した。

 私は今、一児の母となっている。

 あの頃はただの弱い娘だった私も今では母だ。何かが大きく変わったわけではない、が、それでも婚約破棄に傷ついていたあの頃と比べればずっと強くなったと思う。

 人はいつまでも成長する。

「でも……野草は勝手に食べちゃ駄目って……」
「それはいいのよ、食べられるやつだから」
「分かったじゃあ食べてみる……ふぉわぁぁ! 美味しい! 甘くて!」
「ふふ、そうでしょう」
「美味しいよこれ! とっても! 優しい甘み!」

 ボレンガとの婚約が破棄となり憂鬱な日々を過ごしていた私のもとに飛び込んできたのは領地を持つ家の子息である青年からの「一目惚れした」という言葉と婚約申し込みで。最初こそ怪しんでいたものの、一度会ってみれば急激に好きになっていった。で、結婚するに至った。私たち二人が家族となるのに壁はなく、また、躊躇う要素もほとんどなかったのだ。

「これ、また食べたい!」
「採りに行きましょうね」
「わーい! いつ行く? 今から? 明日?」
「気が早すぎ」
「ええー」

 夫婦仲は今も良好。
 子が二人を引き裂くこともあると聞くけれど、わが家は例外だ。

「また行ける時ね」
「うん! でもできるだけ早いほうがいいよ!」
「急かしちゃ駄目よ」
「ええー、でも、早く食べたいよ。もっとたくさん。だって美味しいんだもん。こんな美味しいの、滅多に食べられないし」
「だからいいんでしょ? たまにだからなおさら気分が盛り上がるというものよ」
「そうかなぁ」
「そうよ。ま、また行ける時に行きましょ」
「うん」

 ちなみにボレンガはというと。
 あの後も女遊びを続けていたようだが、ある時親から「いい加減落ち着いて誰かと結婚しなさい!」と注意を受けて感情的になり暴れ、その勢いで母親を殺してしまったそうだ。
 で、それによって親殺しの罪で拘束されて。
 自由のない生活を強いられたその果てに、反省の色がまったく見えないからとのことで処刑されたそうだ。


◆終わり◆
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

不実なあなたに感謝を

黒木メイ
恋愛
王太子妃であるベアトリーチェと踊るのは最初のダンスのみ。落ち人のアンナとは望まれるまま何度も踊るのに。王太子であるマルコが誰に好意を寄せているかははたから見れば一目瞭然だ。けれど、マルコが心から愛しているのはベアトリーチェだけだった。そのことに気づいていながらも受け入れられないベアトリーチェ。そんな時、マルコとアンナがとうとう一線を越えたことを知る。――――不実なあなたを恨んだ回数は数知れず。けれど、今では感謝すらしている。愚かなあなたのおかげで『幸せ』を取り戻すことができたのだから。 ※異世界転移をしている登場人物がいますが主人公ではないためタグを外しています。 ※曖昧設定。 ※一旦完結。 ※性描写は匂わせ程度。 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載予定。

三回目の人生も「君を愛することはない」と言われたので、今度は私も拒否します

冬野月子
恋愛
「君を愛することは、決してない」 結婚式を挙げたその夜、夫は私にそう告げた。 私には過去二回、別の人生を生きた記憶がある。 そうして毎回同じように言われてきた。 逃げた一回目、我慢した二回目。いずれも上手くいかなかった。 だから今回は。

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

お前は要らない、ですか。そうですか、分かりました。では私は去りますね。あ、私、こう見えても人気があるので、次の相手もすぐに見つかりますよ。

四季
恋愛
お前は要らない、ですか。 そうですか、分かりました。 では私は去りますね。

あの日々に戻りたくない!自称聖女の義妹に夫と娘を奪われた妃は、死に戻り聖女の力で復讐を果たす

青の雀
恋愛
公爵令嬢スカーレット・ロッテンマイヤーには、前世の記憶がある。 幼いときに政略で結ばれたジェミニ王国の第1王子ロベルトと20歳の時に結婚した。 スカーレットには、7歳年下の義妹リリアーヌがいるが、なぜかリリアーヌは、ロッテンマイヤー家に来た時から聖女様を名乗っている。 ロッテンマイヤーは、代々異能を輩出している家柄で、元は王族 物語は、前世、夫に殺されたところから始まる。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

処理中です...