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3話
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「ママ! この木の実食べていいの!?」
「ええ、いいのよ」
あれから八年ほどが経過した。
私は今、一児の母となっている。
あの頃はただの弱い娘だった私も今では母だ。何かが大きく変わったわけではない、が、それでも婚約破棄に傷ついていたあの頃と比べればずっと強くなったと思う。
人はいつまでも成長する。
「でも……野草は勝手に食べちゃ駄目って……」
「それはいいのよ、食べられるやつだから」
「分かったじゃあ食べてみる……ふぉわぁぁ! 美味しい! 甘くて!」
「ふふ、そうでしょう」
「美味しいよこれ! とっても! 優しい甘み!」
ボレンガとの婚約が破棄となり憂鬱な日々を過ごしていた私のもとに飛び込んできたのは領地を持つ家の子息である青年からの「一目惚れした」という言葉と婚約申し込みで。最初こそ怪しんでいたものの、一度会ってみれば急激に好きになっていった。で、結婚するに至った。私たち二人が家族となるのに壁はなく、また、躊躇う要素もほとんどなかったのだ。
「これ、また食べたい!」
「採りに行きましょうね」
「わーい! いつ行く? 今から? 明日?」
「気が早すぎ」
「ええー」
夫婦仲は今も良好。
子が二人を引き裂くこともあると聞くけれど、わが家は例外だ。
「また行ける時ね」
「うん! でもできるだけ早いほうがいいよ!」
「急かしちゃ駄目よ」
「ええー、でも、早く食べたいよ。もっとたくさん。だって美味しいんだもん。こんな美味しいの、滅多に食べられないし」
「だからいいんでしょ? たまにだからなおさら気分が盛り上がるというものよ」
「そうかなぁ」
「そうよ。ま、また行ける時に行きましょ」
「うん」
ちなみにボレンガはというと。
あの後も女遊びを続けていたようだが、ある時親から「いい加減落ち着いて誰かと結婚しなさい!」と注意を受けて感情的になり暴れ、その勢いで母親を殺してしまったそうだ。
で、それによって親殺しの罪で拘束されて。
自由のない生活を強いられたその果てに、反省の色がまったく見えないからとのことで処刑されたそうだ。
◆終わり◆
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