生まれつきでどうしようもない容姿を悪く言われる辛さ、少しは分かってもらえただろうか?

四季

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前編

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 かつて私は大切に思っていた婚約者から婚約破棄された。

 理由は、私の鼻が長くて気に入られないから美しくないから、というもので。

 それまで「鼻が長い」なんて冗談でも言われたことがなかったのでかなり驚いた。
 そして、それと同時に、容姿についてあれこれ言われるということの悲しさを知った。

 容姿なんて自分ではどうしようもないではないか。生まれつきのものなのだから。それをあれこれ言われたら、きっと誰だって傷つくだろう。たとえそれが的を射た指摘ではないとしても、だ。

 ――しかし早いものでそれからもう一年が過ぎ。

「リリーナ! 荷物持ったの?」
「うん!」
「ハンカチも確認するのよ!」
「入ってる入ってる~、さっき見た」
「そう。ならいいわ。じゃ、いってらっしゃい」
「ありがとう母さん! いってきます!」

 今日私は新たなる一歩を踏み出す。

 そう、私との婚約希望を出してくれた人顔を合わせるのである。

(上手くやれるかな……ううん、ありのままで! 頑張ろう!)

 不安はある。でもだからといって立ち止まってはいられない。それに、どんなことにだって多少の不安はつきまとうものだ。慣れないことならなおさら。それで普通、それが人間のいたって普通の心というもの。

 幸い今日は快晴だ。

 良いところへ目を向けて歩む方がきっと幸せも近づいてきてくれるだろう。

 ――だから明るい顔で行こう。
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