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後編
しおりを挟む「貴女がリリーナ・オッズ・オブルスクさんですね」
「あっ、はい! そうです!」
「いきなりの申し出、失礼いたしました」
「いえ! 嬉しいです!」
そうして顔を合わせた彼は爽やかで清潔感のある青年だった。
引き締まった頬のライン、大きくはないが凛々しさを感じさせる目もと、艶のある髪は暗いブラウンで、瞳もそれとお揃いのような色。背の高さは男性の平均程度だが、姿勢が非常によく、それゆえかとてもすらっとして見える。
「では少し食事にでも」
「はい……!」
私は彼に悪い印象は抱かなかった。
落ち着いているし、紳士的な空気をまとっているし、まだ詳しいことは知らないがそれでもなかなか素敵な男性である。
――出会いから一年半、私は彼と結ばれた。
「無事結婚までゆけて良かったです。ありがとうございます、リリーナさん」
「ここからまた新たなスタートですね!」
「はい。良い家庭を築けるよう努力します」
「努力って……ふふ、でも、そう言ってもらえるととても心強いです」
ちなみに元婚約者の彼はというと、あの後できた別の婚約者と結婚するも結婚後急に見下した態度を取られるようになり、特に容姿について侮辱されるというようなことが多発したそう。で、段々自信がなくなっていって。その結果さらに奥さんに従うことしかできなくなり、やがて心を病んだそうだ。
今は奥さんとは別の場所に住み療養しているそうだが、回復傾向は一切なく、医師からも「もしかしたらもう手遅れかもしれない」と言われるほどだとか。
さすがに、可哀想に、とは思えないが。
生まれつきでどうしようもない容姿を悪く言われる辛さ、少しは分かってもらえただろうか?
◆終わり◆
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