上 下
2 / 2

後編

しおりを挟む

 ◆


 あの後、私の父は激怒し、モルトラスのところへ行った。
 そして色々話したようだった。
 父は彼の身勝手な行動を責め、また、慰謝料を払ってもらうといったことを伝えたようであった。

 もういいよ、やめて……。

 私はそんな風に思っていたのだけれど。

 後日、少しだけだがモルトラスから慰謝料が支払われた。

 これは意外だった。
 自分に非はないから払う必要はない、とか言うだろうと思っていたから。

「もっと多く取れれば良かったのだが……すまない」

 ただ、それでも父は満足はしていないようで、額にもやもやしているようだった。

「いいのよ父さん、私、お金なんて求めていないわ」
「まさか取らない方が良かったか!?」
「いいえ、そうじゃないわ。でも額なんてどうでもいいのよ。けどちょっと意外、まさか本当に払ってもらえるなんて」
「かなり強く言っておいたからな」
「そうだったのね。……ありがとう、父さん」

 嬉しいのは、その気持ち。

 私のために何かしようというその気持ち、それが一番ありがたいもの。


 ◆


 モルトラスとの婚約の破棄から二年半、私は歴史ある領主の家の子息と結ばれた。

 彼との出会いは伯母からの紹介だった。
 最初に会った時はさらりと話す程度で終わったのだが、二度目に会った時に同じジュースが好きなことが判明してその辺から急激に仲良くなった。
 そこからは早くて。
 二人の心はどんどん距離を縮めてゆき、そしてやがてゴールイン。

 そうして今に至っている。

 ちなみにモルトラスはというと、あの後ガーベラと婚約したいと親に言ってみるも「絶対にダメ、家柄が」と言われてしまったそう。それで彼は親と縁を切り家を出ることを決意したそうで――しかし、出発の日の朝、ガーベラが待ち合わせ場所へ行くとそこには既に息を引き取ったモルトラスが倒れていたそうで。つまり、モルトラスは、少し早めに着いた待ち合わせ場所にて不審者に殺められてしまったのである。彼の手首からは高級な腕時計が奪われていたそうで、それ目的の殺害だろうという話となったようである。

 その後ガーベラは絶望に堕ち、ずっと泣いていたそうだ。


◆終わり◆
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...