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1話
しおりを挟むある朝起きて家の前まで出ると、百人規模の合唱団が立っていた。
そしてその一番前には我が婚約者エーベルリッヒがいる。
「今日は重要なことを告げに来た」
彼はそう言って、片手を掲げる。
すると。
「あんたとの~」
「こんやくは~」
「はきとする~」
合唱団がその数多の喉を使ってそんな風に旋律を奏で始めた。
「え、ええ……。ちょっと、エーベルリッヒ? これは一体……どういうこと? 何これ、何なの?」
想定外の展開に戸惑いしか露わにできない。
「これが宣言だ」
「え?」
「今歌われていただろうが!」
エーベルリッヒは急に調子を強めてくる。
何もそんな風に怒らなくても……。
落ち着いてやり取りしてくれればいいのに……。
「ええと……婚約破棄?」
「ああそうだ。それが今日告げたいと思っていたことだ。ちなみに言葉そのままの意味」
「つまり、婚約を破棄するということを告げたいということ?」
すると彼は子どものようにこくりと頷く。
柔らかな風が朝の澄んだ空気を揺らしていた。
「それはまた……唐突ね、何があったの?」
もう少し詳しく聞きたいと思って尋ねてみるのだが。
「それについては話す気はない!」
きっぱりそんな風に返されてしまった。
エーベルリッヒの表情は固い。
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