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2話

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「生んでやったのに! 育ててやったのに! そのくせ偉そうにそんな生意気なことを言って! ――ああ、もう、嫌になるわ。どうしてこんな無能でみっともなくて生意気さだけ伸びたような女になってしまったのかしら……ああ辛い、母として辛いわ……。愚かな娘を持つと不幸ね……」

 演技じみた言葉を並べる母。

 自分を被害者だと思っているのか?
 己の行動が他者にどういう影響を与えているか気づいていないのか?

 ……呆れてしまう。

 だが、いつまでもこうして押さえ付けられて生きてゆくのは嫌だ。そんなことではいつかきっと爆発してしまう。今はまだ耐えられているけれど、いずれはきっと怒りが抑えきれなくなるだろう。私だって人間だから、我慢にも限界がある。

 どうしたものか。

 何かないのだろうか、ここから抜け出す方法は。


 ◆


 風邪を引いた母の代わりに参加した王都でのパーティーにて、私は、何が起きたか分からないが王子プットに見初められた。

 催しの最中、彼は私にやたらと喋りかけてきて。何だか謎だな、と思っていたところ、興味を持たれていたことが判明した。しかも既に将来の妃候補とまで考えられているようで。驚くほどの速度で話は進んでいるようだった、彼の方では。

 で、そのことが母にばれると、母の私への接し方は大きく変わった。

「やればできる子だって思ってたのよ! 王子に見初められるなんてやるじゃない、でかしたわよ!」

 でも褒められても嬉しくない。
 母が欲しいのは私ではなく地位や名誉だと知っているから。
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