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前編
しおりを挟む我が名はフェミリア、この国の王女だ。
私には婚約者がいる――否、いた。
彼の名はオッズ・ア・クロフトネイン。
金持ちの息子だった。
そう言えば条件は悪くないようだが、お金の有り無しなど気にならないくらいの問題があった。そう、女性関係の素行だ。彼は非常に女好きであり、王女の婚約者という位置にありながら城では侍女を街では一般市民の女性を誘惑し、深い関係になろうとすぐにするのである。
明らかに問題のある振る舞いだったので、こちらから婚約破棄した。
だが彼はそのことを恨んでいたようで。今朝、散歩中に、突然柱の陰から飛び出してきた。その手には刃物が握られていて、明らかに私を狙っている様子だった。もっとも、従者と共に歩いているところだったのですぐに捕らえられたのだが。
拘束後彼は「裏切り者の王女め死ね!」とか「俺を捨てやがって許さねぇからな!」とか叫んでいた。
はぁ……まったく、厄介な人だ……。
しかしもう彼に会うことはないだろう。なぜって、恐らく近いうちに処刑されるから。王女に手を出そうとした罪は重い。恐らく、いや間違いなく、彼は数日以内に死刑となるだろう。
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