上 下
1 / 2

前編

しおりを挟む
「お前のような家事もまともにできず俺に従う気もない女とはやっていけない。よって、婚約は破棄とする」

 それはある晴れの春の日のこと。
 私は突然そんなことを言われてしまった。

 意外だった。彼が私をそんな風に見ていたなんて。

 でも今さら何を言っても聞いてはもらえないだろう。今までも揉めた時はそうだった。彼はいつも自分の主張ばかりを強く続け、私の言い分なんて少しも聞こうとはしない。いつも、どんな時も、私に言い返す権利なんてないのだ。

 こうして私は、呆れるくらいあっさりと、切り落とされてしまうこととなった。

 私たちは確かに婚約者同士だった。
 けれどもこの日を境に他人になった。
しおりを挟む

処理中です...