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前編
しおりを挟む「お前とはもうやっていけん! 婚約は破棄とする!」
まったり系令嬢フィーネリアは婚約者オドルよりある日突然そんなことを告げられてしまった。
フィーネリアは誰もが認める絶世の美女だ。華やかであり、しかし派手過ぎす品性もあり、と、まさに理想的な顔立ちをしている。美を絵に描いたような女性、と言って過言ではないだろう。
それほどに美しい彼女だが――少々まったりしているところがあって、オドルはその点が気に食わないと常々言っていた。
「お前みたいな顔だけ女を相手にしているほど暇じゃねぇんだよ」
「顔だけ女……とは~……?」
「とろいんだよ! いちいちおっせぇし! 反応も、喋りも、とろとろ。お前と一緒にいたら一瞬で寿命尽きるわ!」
オドルは攻撃的に言葉を並べる。
「それに、女なら奉仕の心を持ってて当然だろ。男に、それも結婚する男に、ご奉仕させてくださいとも言わねぇなんて論外だ。あ? 分かってんのか?」
「ご奉仕、とは……それは一体?」
「うぜぇ!!」
「何でしょうか~」
「だ! か! ら! 女の存在価値なんぞ、男をどこまで愉しませられるかだろ? けどお前はそれに関して一切何もしねぇ。ってことはだな、女としてのお前の価値はゼロなんだよ!」
オドルはそれからも数時間にわたってフィーネリアのことをボロクソに言い続けた。
そうして二人の関係は終わりを迎えることとなる。
「嫌われてしまったみたい……」
フィーネリアはそう呟いていた。
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