まったり系令嬢は婚約破棄されてもさほど動じない。~しかし親と兄は激怒していますのでお気をつけください~

四季

文字の大きさ
2 / 2

後編

しおりを挟む

 ◆


 当人であるフィーネリアはまったりしているのでそこまでダメージを受けてはいなかった。が、彼女の両親や兄はオドルに対して憎しみの感情を抱いた。だがそれもおかしな話ではないのだ。ある意味当たり前のことである。娘を、妹を、ボロクソに言われて黙っていられるほど寛容な人間など滅多に存在しない。

 兄と父は協力してオドルを誘拐する作戦を決行。
 それはあっさりと成功した。
 オドルは激怒している二人のもとへと連れていかれることとなった。

「可愛い妹に暴言を吐くなんて……許さないよ、君だけは」
「我が娘に心ない言葉をかけた罪、本日より苦しみ続けることで償え」

 怯えた様子のオドルに対して兄と父はそれぞれそんな言葉を投げた。

 その後オドルは地獄の日々へと堕とされることとなる。

 朝から晩まで暴力を奮われる日常。
 自由はなく暗闇で生きなくてはならない絶望を絵に描いたような日常。

 彼はそんな世界へと飛び込まされることとなったのだった。

 そして、そんな日常の開始から二ヶ月も経たず、オドルは死を切望するようになった。彼は毎日涙を流しながら「死なせてくれ」と懇願していた、が、そんなことを言っても無意味で死なせてもらえるはずもなく。拷問のような日々は続いた。季節が一つ二つと過ぎてゆく。

 そんな彼がついに死ねたのは、冬が訪れた頃であった。

 風邪をこじらせたことで、彼はようやく、何よりも強く望んでいた死にたどり着けたのである。

 ちなみにフィーネリアはそんなことが起こっていることは知らず毎日ティータイムを楽しんでいる。

「今日は来てくれてありがとう~」
「誘っていただけ嬉しいです!」
「ふふ、来てもらえてとっても嬉しいです」
「お茶も美味しいですし」
「気に入っていただけそうで何よりだわ~」

 フィーネリアは自由にお茶会を楽しめる日々を謳歌している。

 彼女はもとより人とお茶をするのが好きなのである。

「ちょっと冷える季節になってきたみたい~」
「そうですね」
「上着羽織らなくっちゃ」
「どうぞ、ごゆっくり」
「よいしょ、よいしょ……ふぅ、羽織れたわ」
「良い色ですね、その上着」
「本当? 嬉しい~。この上着お気に入りなの」


◆終わり◆
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたので呪いをかけたら、愛人が不幸に落ちていきました

桜井正宗
恋愛
上級貴族の婚約者から、一方的に婚約破棄を言い渡された田舎令嬢・エレイナ。 けれど、彼女はただの令嬢ではなかった。実はその瞬間に発動する呪いを、あらかじめ“村の呪術師”に依頼していたのだ――。 ところが、呪いは不発。 どうやら癒術師の愛人・マキが呪いを無効化していたらしい。 怒りに燃えたエレイナは、再び呪術師のもとを訪れ、新たな呪い《不幸を呼ぶドール》を手にする。 今度はマキが次々と不幸に見舞われ、ついには破滅。アランも道連れのように没落していき……。 「呪い殺されるか、慰謝料を払うか。選びなさいな?」 勝利を手にした令嬢が、最後に心を通わせたのは――呪術師の正体である、ある公爵家の長男だった。 復讐も恋も手にした、令嬢のざまぁ逆転劇。

子どものようなわがままを言う王子が婚約者だったのですが、どうやら彼とは離れられることとなりそうです。

四季
恋愛
子どものようなわがままを言う王子が婚約者だったのですが……。

幼馴染みと交わした誓いは結婚間近に突如破られてしまいました。どうやら心が他の女性に移ってしまったようです。

四季
恋愛
幼馴染みと交わした誓いは結婚間近に突如破られてしまいました。 どうやら心が他の女性に移ってしまったようです。

心ない言葉と共に婚約破棄を宣言された日の夜、意外な形で出会いがありまして……?

四季
恋愛
心ない言葉と共に婚約破棄を宣言された日の夜。

悪しき婚約者から意外な形で逃げられたので、またここから頑張ろうと思います。

四季
恋愛
またここから頑張ろうと思います。

悪役令嬢が腹黒ヒロインと手を組んだら?

真理亜
恋愛
公爵令嬢のライラは婚約者である第2王子のルドルフのことが大嫌いだった。さっさと婚約破棄したくて堪らなかった。なにせとにかく女癖が悪い上に生来の悪党だからである。婚約破棄に向けて今日も着々とルドルフがやらかした悪事の証拠集めに勤しむ彼女だったが、ある日聞き捨てならない情報を入手する。どうやらルドルフの方もライラとの婚約破棄に向けて何やら企んでいるというものだ。イリナという男爵令嬢を利用してライラを追い詰めようと画策しているらしい。しかもイリナを使い捨てにするつもりらしい。そこでライラはイリナの元を訪れこう言った。 「ねぇ、私と手を組まない?」 ☆こちらは別タイトルで投稿していた物を、タイトルと構成をやや変えて投稿し直したものになります。

紅の髪のせいで理不尽な目に遭わされてばかりでしたが、婚約破棄の向こう側に出会いと幸せがありました。

四季
恋愛
紅の髪のせいで理不尽な目に遭わされてばかりでしたが、婚約破棄の向こう側に出会いと幸せがありました。 生きていて良かったです。

婚約破棄され聖女も辞めさせられたので、好きにさせていただきます。

松石 愛弓
恋愛
国を守る聖女で王太子殿下の婚約者であるエミル・ファーナは、ある日突然、婚約破棄と国外追放を言い渡される。 全身全霊をかけて国の平和を祈り続けてきましたが、そういうことなら仕方ないですね。休日も無く、責任重すぎて大変でしたし、王太子殿下は思いやりの無い方ですし、王宮には何の未練もございません。これからは自由にさせていただきます♪

処理中です...