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後編

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 そうしてフォーカスと別れることとなった私だが、その胸の内は決して暗くはなかった。
 いや、むしろ、爽やかに満ちていた。
 これまでは彼と幼馴染みの濃い過ぎる気がする関係についてもやもやすることも多かったが、もうこれで他人になる。そうなってしまえば彼らの関係などどうでもいいことだし、いちいち心配することもない。


 ◆


 数年後、私は、フォーカスではない三つ年上の男性と結婚した。

 彼との出会いは行きつけの店でのこと。
 棚の下の隙間に硬貨を落としてしまってなかなか取れず困っていた時に彼が声をかけてくれたのが始まりだ。

 その硬貨は彼のお陰で無事回収することができた。

 それから彼とよく喋るようになり、徐々に関係が深まって、やがて結ばれた。

 今はこの道を行けて良かったと心から思えている。

 フォーカスのところにいては彼には出会えなかった。あのままフォーカスの妻になっていたら、もちろん彼と結婚することもなかっただろう。そういう意味では、フォーカスと幼馴染みのお陰でこんな風になれたという見方もできるのだ。

 ある意味感謝、という面もあるかもしれない。

 ちなみにフォーカスと幼馴染みは結婚後数ヵ月で離婚したそうだ。

 これは友人から聞いたことだが。

 二人は『彼の婚約者という邪魔者がいなくなったこと』で急激に冷めてきてしまって、しかしその状態で結婚したため、些細なことで喧嘩するような夫婦となってしまったのだとか。

 で、フォーカスは今は、長時間労働低賃金の極みなブラック工場で働いているらしい。


◆終わり◆
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