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9話「悲劇も破滅も越えていく」
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もう何度ここへ来ただろう。
何もない。
何でもない。
そんなだけれど優しさはある、この空間。
生の狭間で私はただこの光景を何度も見つめる。
私さえ不確かな空間を漂う時、私は、次なる人生へ思いを馳せる。
どんな人間で生まれる?
どんな人々と出会う?
そしてどうやってまたここへ戻ってくるのだろう……。
分からないことばかりでも、今はただ、運命をなぞり流れることしかできない。
◆
魔族の娘イリースとして生まれた私は、魔王ガジェッテと結婚し、共に運命を歩むこととなった。
今回は婚約破棄はなかった。
そこは意外だった。
けれど夫となってくれたガジェッテはとても良い人だったので、純粋に想い合うことができた。
魔族に純愛なんて似合わない?
……まぁそうか。
けれども案外そんなことはないのだ。
なぜなら魔族もほぼ人間みたいなものだから。
種族は違っても、基礎的な部分は似ている。
それが魔族と人間である。
私はガジェッテのことが好きだった。
彼もイリースを好きでいてくれていた。
でも……。
「イリース! 危ない!」
共に出た戦場で。
「そん、な……」
「逃げるんだ」
「ガジェッテ……い、嫌、嫌よそんな……」
「早く」
悲劇に見舞われた。
「逃げろ」
王にして夫であるガジェッテが私を庇って倒れたのだ。
「やめて……い、や……どうして……そんな、そん、な……」
「愛しているよイリース」
戦いは私から夫を奪った。
――そして魔族の王妃イリースは正気を失った。
私イリースはすべての力を解放。正常な精神を失っていたこともあり魔力をコントロールできなくて。その身体から溢れ出した無限の魔力は戦場にあるものすべてを破滅へと誘った。
何もかもが壊れる。
何もかもが消える。
塵になっていく……。
そうしてすべてを破壊した後、イリースは魔力を使いきり亡くなった。
◆
その次の人生は普通の女だった。
前回は魔族の王妃。
あれはいろんな意味で凄まじい生だった。
「やあ、アーメリア」
平凡な女アーメリア・フィナンシェルとして生まれた私は、近所の気さくな青年オポストと婚約者同士となっている。
「オポスト、配達は終わったの?」
「もちろん!」
「そうだったのね、お疲れさま」
彼は郵便配達の仕事をしている。
なので暑い日も寒い日も外を走り回っている。
それでも笑顔を絶やさないから、凄い人だなぁとたびたび思う。
今回はあまり戦いたくない。そんな風に思ったから、今は普通の女として生きようと努力している。何回かそこそこハードな人生だったので。そろそろ平凡な日々に身を置きたくなってきたのである。
「アーメリア、この後ちょっとだけお茶しない?」
「ええぜひ!」
「じゃあ待っててくれるかな」
「一緒に行こうか?」
「いやいやいや! それはいい! 用事色々あるからさ! そこで! そ、そそそ、そ! こ! で! 待っていて!」
「……え、ええ。分かったわ。待っているわね」
何をそんなに慌てているのだろう……?
嫌な予感がしていたのだが。
少しして知り合いから情報が入った。
『オポストが職場の女性と浮気している』
入ってきた情報はそんな不快なものだった。
とはいえ人が言っただけのことをすぐには信じられない。……いや、信じてはならない、が正しいの。だってそうだろう? もしかしたらその人が嘘をついているかもしれないのだから。二人の仲を引き裂こうとしている、という可能性だってあるだろう? 情報は情報であり、重要なものではあるけれど。真の意味で信じられるものというのは、やはり、根拠ある情報や実際に目にしたものだ。
なので私は調査してみることにした。
(まさか、あのオポストが浮気だなんて……そんなことあるのかしら)
事実がどうであるにせよ。
まず知るべきは最も正しい答え。
(信じられない……だってあんなにも優しくて爽やかで、そんな人が私に嘘をついているだなんて……いや、でも、そういえば……ううん、今は彼を信じる)
まずは答えにたどり着こう。
そこからすべてが始まるのだから。
(浮気の件に関して絶対的な根拠はないのだもの。今はまだオポストのことを信じておきましょう、今は、まだ……それに、信じたいから信じるの)
何もない。
何でもない。
そんなだけれど優しさはある、この空間。
生の狭間で私はただこの光景を何度も見つめる。
私さえ不確かな空間を漂う時、私は、次なる人生へ思いを馳せる。
どんな人間で生まれる?
どんな人々と出会う?
そしてどうやってまたここへ戻ってくるのだろう……。
分からないことばかりでも、今はただ、運命をなぞり流れることしかできない。
◆
魔族の娘イリースとして生まれた私は、魔王ガジェッテと結婚し、共に運命を歩むこととなった。
今回は婚約破棄はなかった。
そこは意外だった。
けれど夫となってくれたガジェッテはとても良い人だったので、純粋に想い合うことができた。
魔族に純愛なんて似合わない?
……まぁそうか。
けれども案外そんなことはないのだ。
なぜなら魔族もほぼ人間みたいなものだから。
種族は違っても、基礎的な部分は似ている。
それが魔族と人間である。
私はガジェッテのことが好きだった。
彼もイリースを好きでいてくれていた。
でも……。
「イリース! 危ない!」
共に出た戦場で。
「そん、な……」
「逃げるんだ」
「ガジェッテ……い、嫌、嫌よそんな……」
「早く」
悲劇に見舞われた。
「逃げろ」
王にして夫であるガジェッテが私を庇って倒れたのだ。
「やめて……い、や……どうして……そんな、そん、な……」
「愛しているよイリース」
戦いは私から夫を奪った。
――そして魔族の王妃イリースは正気を失った。
私イリースはすべての力を解放。正常な精神を失っていたこともあり魔力をコントロールできなくて。その身体から溢れ出した無限の魔力は戦場にあるものすべてを破滅へと誘った。
何もかもが壊れる。
何もかもが消える。
塵になっていく……。
そうしてすべてを破壊した後、イリースは魔力を使いきり亡くなった。
◆
その次の人生は普通の女だった。
前回は魔族の王妃。
あれはいろんな意味で凄まじい生だった。
「やあ、アーメリア」
平凡な女アーメリア・フィナンシェルとして生まれた私は、近所の気さくな青年オポストと婚約者同士となっている。
「オポスト、配達は終わったの?」
「もちろん!」
「そうだったのね、お疲れさま」
彼は郵便配達の仕事をしている。
なので暑い日も寒い日も外を走り回っている。
それでも笑顔を絶やさないから、凄い人だなぁとたびたび思う。
今回はあまり戦いたくない。そんな風に思ったから、今は普通の女として生きようと努力している。何回かそこそこハードな人生だったので。そろそろ平凡な日々に身を置きたくなってきたのである。
「アーメリア、この後ちょっとだけお茶しない?」
「ええぜひ!」
「じゃあ待っててくれるかな」
「一緒に行こうか?」
「いやいやいや! それはいい! 用事色々あるからさ! そこで! そ、そそそ、そ! こ! で! 待っていて!」
「……え、ええ。分かったわ。待っているわね」
何をそんなに慌てているのだろう……?
嫌な予感がしていたのだが。
少しして知り合いから情報が入った。
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入ってきた情報はそんな不快なものだった。
とはいえ人が言っただけのことをすぐには信じられない。……いや、信じてはならない、が正しいの。だってそうだろう? もしかしたらその人が嘘をついているかもしれないのだから。二人の仲を引き裂こうとしている、という可能性だってあるだろう? 情報は情報であり、重要なものではあるけれど。真の意味で信じられるものというのは、やはり、根拠ある情報や実際に目にしたものだ。
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まず知るべきは最も正しい答え。
(信じられない……だってあんなにも優しくて爽やかで、そんな人が私に嘘をついているだなんて……いや、でも、そういえば……ううん、今は彼を信じる)
まずは答えにたどり着こう。
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