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前編
しおりを挟む私には生まれつき特別な力があった。
強大な力。
人を消し飛ばすどころか街や国をも消し飛ばせるような魔力である。
ただ、それをむやみに使ってしまっては危険なので、私は幼い頃から封魔の眼鏡をつけていた。
「やーいメガネクソー」
「地味子ちゃぁ~ん、かぁ~わい~いぃ」
「もてねーだろめがね」
その眼鏡のせいで、昔から、知り合いに色々言われてきた。
眼鏡をかけている女性は少ない。
若い人となるとさらに。
それゆえからかいの対象となってしまいがちなのだ。
けれどもそれには耐えられた。大きな力を抱いているから仕方ない、そう思えたから。私が我慢すればいい、そう思って生きてきた。この眼鏡をつけていることが世界のためなら私はそれでもいい、そう思っていたのだ。
だが。
「わりーけどよ、婚約、破棄するわ」
「どうして……」
「眼鏡がださくてさ、やーっぱ無理だわ」
婚約者エリオからそう言われた時はショックだった。
眼鏡だけのために婚約破棄されるの?
眼鏡はそんなに悪なの?
眼鏡をしているだけで私の価値がそんなにも下がるの?
「おれ、もっと美人が良いしさ」
「そうですか……分かりました」
「そういうとこも可愛くねーよな、せめて泣いて謝れよ」
「ではこれで失礼します」
「おい! 待てよ!」
エリオは容赦なく腕を掴んでくる。
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