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後編

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「なーに勝手に出ていこうとしてんだよ! 女なら謝れよ!」
「しかし……」
「謝って当然だろ! 女はなぁ、男に言われたらどんなことで受け入れて謝らなくちゃなんねーんだよ! それが当たり前なんだ! 取り敢えずその眼鏡外せや!」

 感情的になっているエリオの片手が眼鏡を払った。
 眼鏡が宙を飛んでゆく。

「あ――」

 その時には手遅れだった。

 瞳に浮かぶ紋章。
 そして自動で発動される術。

 それは、近くで目が合ったエリオに向けて放たれる――。

「……ぎゃああああああああ!!」

 エリオは急に叫んだ。
 耳が痛いほどの大声。
 そして彼の肉体は内側から崩壊してゆく。

 こんな術もあったとは知らなかった。

「あば、あば、ぶ、ぅ、ええええええええ!!」

 そしてエリオは死亡した。

 私は急いで眼鏡を拾い着用。
 それですべてが停止する。

 何とか何も壊さずに済んだ――目の前のエリオ以外。


 ◆


 あれから数年、私は、国王の管理下に置かれた。
 私の力は危険だという話になったからだ。
 けれども幸い酷い扱いを受けることはなかった。

「ここでゆっくり暮らすといい」

 国王には心があった。温かい心、思いやりの心が。だから、危険人物である私に対しても、普通の人へ向けるものと同じような配慮があって。

「あの部屋でなら、その力が暴走することはないだろう」
「ありがとうございます」

 おかげで穏やかな暮らしを与えてもらえた。


 ◆


 城の一室に置かれるようになって数年、私は、王子の妻となった。

 ある時偶然出会って。
 それからは早かった。
 運命は私たちを早く強く結びつけたのだ。

 眼鏡は今も外せないけれど、レンズ越しでも彼と見つめ合うことはできる。


◆終わり◆
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