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6話
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「……っ!」
箱の中に入っていたのは、宝石で作られた花。
芯の部分は黄色。花びらの部分は赤系統の幅広い色み。明るい雰囲気の花。光を反射するように削られていて、さほど強くない自然光でも面一つ一つが煌いている。
「高そうね」
一番に出てきた感想はそれだった。
少し失礼かもしれないけれど。
「店先で惚れて、すぐ買ってしまいました」
「確かに綺麗だわ。でもいいの? こんな高そうなものを貰って」
「もちろん。きっと似合いますよ」
すぐには返せず、少しして。
「……ありがとう」
贈り物を貰ったくらいでちょろい、と言われるだろうか。いや、言われたとしたら、きっとそうなのだろう。私は優しさに弱い。優しさに慣れていないから、優しくされるとすぐに心を動かされてしまう。
「では今日はこれで」
「もう行くの?」
「はい。この後、また戦場へ」
彼は笑みを浮かべて言った。
去りかけた彼の片腕を、私は咄嗟に掴む。
「待って!」
訪れる沈黙。
視線と視線が重なる。
「……お願い、行かないで」
行かせてはならない。
本能がそう告げていた。
「戦場へは行かないで」
私は彼を引き止めた。
これ以上彼が何かを失うところを見るのは辛かったから。
いや、本当は、彼が何かを失うことを恐れたのではなかったのかもしれない。彼を失うことを恐れた、それが事実だ。ただ手を離したくなかった。手を離したら、彼がどこかへ行ってしまうような気がして。
絶対に離したくない、強くそう思った。
「ここに来なくても、会えなくても、それでもいい。だから戦場へは行かないで。これ以上貴方が傷つくところを見たくない」
数秒の沈黙の後、彼は口を開く。
「……分かりました」
彼の口から出たのは意外な言葉だった。
「えっ」
「ではそのように話を進めます。その代わり……これからもここへ来て構わないですか?」
その言葉に、私は、ようやく口角を上げることができた。
◆終わり◆
箱の中に入っていたのは、宝石で作られた花。
芯の部分は黄色。花びらの部分は赤系統の幅広い色み。明るい雰囲気の花。光を反射するように削られていて、さほど強くない自然光でも面一つ一つが煌いている。
「高そうね」
一番に出てきた感想はそれだった。
少し失礼かもしれないけれど。
「店先で惚れて、すぐ買ってしまいました」
「確かに綺麗だわ。でもいいの? こんな高そうなものを貰って」
「もちろん。きっと似合いますよ」
すぐには返せず、少しして。
「……ありがとう」
贈り物を貰ったくらいでちょろい、と言われるだろうか。いや、言われたとしたら、きっとそうなのだろう。私は優しさに弱い。優しさに慣れていないから、優しくされるとすぐに心を動かされてしまう。
「では今日はこれで」
「もう行くの?」
「はい。この後、また戦場へ」
彼は笑みを浮かべて言った。
去りかけた彼の片腕を、私は咄嗟に掴む。
「待って!」
訪れる沈黙。
視線と視線が重なる。
「……お願い、行かないで」
行かせてはならない。
本能がそう告げていた。
「戦場へは行かないで」
私は彼を引き止めた。
これ以上彼が何かを失うところを見るのは辛かったから。
いや、本当は、彼が何かを失うことを恐れたのではなかったのかもしれない。彼を失うことを恐れた、それが事実だ。ただ手を離したくなかった。手を離したら、彼がどこかへ行ってしまうような気がして。
絶対に離したくない、強くそう思った。
「ここに来なくても、会えなくても、それでもいい。だから戦場へは行かないで。これ以上貴方が傷つくところを見たくない」
数秒の沈黙の後、彼は口を開く。
「……分かりました」
彼の口から出たのは意外な言葉だった。
「えっ」
「ではそのように話を進めます。その代わり……これからもここへ来て構わないですか?」
その言葉に、私は、ようやく口角を上げることができた。
◆終わり◆
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