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前編
しおりを挟む「ねーえ、もっと触れて?」
「ああ」
「あたしのこと、好きぃ?」
「好きだよ」
その日、まさかのシーンを目撃してしまった。
婚約者ルーベルタンが自室に女性を連れ込んでいるところ。
しかもソファで女性に覆いかぶさるようにして。
お互いに甘い声を発しながら絡みを楽しんでいる場面だ。
「でもぉ、婚約者いるんでしょお?」
「いるけど、でも、形だけだよあんなの」
「そうなのぉ?」
「ああ。当たり前だ。あんなのは形だけの婚約、愛しているわけじゃない。向こうだってそうだろうよ」
「そっかぁ~」
ルーベルタンは女性と手を握り合いながら深く口づけを交わす。
「だからお前は何も気にしなくていいんだ」
「そう?」
「ああ」
「本当に?」
「そうだ、愛しているのはお前だけさ」
「そっかぁ~、なら嬉しい~」
私はすぐに状況を理解できなかった。
でも、動かない脳のまま、これを何とか記録しなくてはと思った――よな気がする。
「婚約、破棄してくれるぅ?」
「いやそれはまだ無理だな」
「ええっ」
「だって決まってしまっているからな」
「そんなぁ……」
「だが、こうやって生を楽しむことはできるさ。これからもずっとな。だってあの女、馬鹿そうだから」
馬鹿そう、て!
……いや、そんなことに怒っている場合ではない。
こっそりこの光景を撮影することにした。
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******
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