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後編
しおりを挟む「アダル……これが最大の幸福、だったの?」
私は彼の亡骸を見下ろしながら思わずそう発してしまった。
彼が求めていた幸福とは何だったのだろう。
それは本当にこんなものだったのだろうか。
急に雷に打たれて死ぬ、それが本当に彼が望み見すえていた未来だったの……?
ただ、なんにせよ、アダルはもうこの世を去った。
彼は私の婚約者だった。
でももう死んだ。
つまりその瞬間に婚約は自動的に破棄となったのだ。
「さよなら」
◆
あれから数年、私は良き人と結ばれた。
今は夫が営むパンケーキ店を手伝っている。
忙しくも楽しい日々だ。
店での仕事は最初こそ慣れないことばかりで戸惑いも大きかったけれど、時の経過と共にそれにもすっかり慣れて、今では楽しさを感じられるほどになっている。
夫はいつも感謝してくれる。
とても純粋な言葉で。
それもまた嬉しいところだ。
感謝の言葉をかけてもらうたび、手伝いをしていて良かったと思える。
◆終わり◆
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