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前編

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 私たち、ずっと一緒にいられると思ってた。
 だって仲良しだったし婚約だってしていたんだもの、普通はそう思うでしょう?
 二人の道は未来まで伸びていると。
 実際に関係も進展していたのだから、そう考えてしまうのが当たり前でしょう?

 でもそれはある時急に崩れてしまったの……。

「ごめん、君との婚約破棄するわ」
「え……」

 その日は突然やって来た。
 婚約者の彼ヴォーヴィスが終わりを告げてくる日は。

「この前さ、仕事場の後輩と酔っ払った勢いで仲良くしちゃってさ。それで、向こうの親から『責任を取って結婚しろ!』って言われてるんだ」
「何よそれ……」
「だからまぁこれもいい機会かなって。ちょうど君には飽きてきていたところだったし、そっちに行こうかなって思って。それで今日こんな話を振ったんだ」

 彼は正直だった。
 それは良いことではあるのだけれど――でもやはりどうしても傷ついてはしまう。

「私を捨てるのね」
「うん、そういうこと」

 彼の面には笑みすら浮かんでいて。
 どうやら彼は私の心なんて一切気にしていないようだ。

「ごめんな、急に。じゃ、そういうことなんで。さよなら」
「待って! 勝手過ぎるわ」
「何だよ急に、もう理解したんだろ? だったらしつこくあれこれ言うなよ、鬱陶しい」
「鬱陶しい? そんな言い方はないわ……、急に婚約破棄なんて告げておいて。そんなの酷過ぎよ」

 言えば。

「うっるさいなぁ!!」

 ヴォーヴィスは急に調子を強めてきた。

「いいから去れよ!!」

 そうして私は彼の前から去らされることとなったのだった。
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