愛してるなんて言っていたのに、あれは一時の気まぐれでしかなかったのですね。まぁそういうことなら良いでしょう、私は貴方の前から消えるだけです。

四季

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前編

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「愛してる! 君と生涯を共にしたい!」

 あの日、彼はそう言った。

 私はその言葉を信じた。
 そして婚約者同士となったのだ。


 ◆


「君よりもっと可愛くて素敵で最高な人に出会ったから、婚約はもう破棄させてもらうことにしたよ」

 信じたのが間違いだった。
 本当はあんな言葉を信じるべきではなかったのだろう。

「気の迷いだったと思うんだよな、君と結婚なんて。正気ならそんなことは絶対言わなかった。ははは、あの時はどうかしていたと自分でも思うよ」

 婚約者ツルミーはそれが当たり前であるかのような調子で言葉を並べる。

 目の前に私がいるのに。
 そんなことは一切気にしていない。

「じゃあな、これでばいばーい」

 何か言い返そうと思ったが、言葉を見つけるより先に使用人の女性に連れられ退室することとなってしまった。

 きっともうツルミーとは会えないだろう。
 生涯言い返すことさえできないのだろう。

 でも、それで良かったのかもしれない……。

 余計なことを言ってしまってさらにややこしいことに発展していたら。そう考えるととても恐ろしくて。何か言って揉めるようなことになっては大惨事だ。

 今日、私は彼の前から去る。

 あの日信じた言葉はすべて気の迷いでしかなかったのだろう。
 それでも信じてきたのだ。
 それゆえ悲しさも切なさも辛さもある。

 ただ、今さら何を言っても、何も生まれはしない。

 前を見よう。
 前へ進もう。

 それしかない。
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