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前編
しおりを挟む十八歳で婚約した彼ルトイは、明るくて自由奔放な人だった。
けれどもそういうところも含めて好きだったのだ。
何にも縛られないような彼が尊敬できたし愛おしかった――あの時までは。
「え……浮気していたの……」
ある夜、私は、街中で女を連れて歩くルトイを目撃してしまったのだ。
もちろんたまたま。
後をつけていたわけでも何でもない。
なのに、幸か不幸か、彼と女性が寄りかかり合うようにしていちゃつきつつ歩いているところを目にしてしまったのである。
「どうして……」
「どうして? 何だっていいだろそんな理由なんて」
話を聞けば、彼は急に冷ややかになる。
「婚約者がいたら女と仲良くしちゃ駄目なのか? お前はそんなことを言うのか? だとしたら悪女だな。悪魔の血を引く女だ」
「え……、何よそれ、どうしてそんなこと……」
「誰と関わるかなんて俺の自由だろ!?」
「でも……婚約者がいるのに他の女性といちゃいちゃするのはさすがに……問題だと思うのだけれど」
恐る恐る言えば。
「それはお前がモテないからだろ!!」
急に大声を出される。
その時の彼はいつもの私が知っている彼とは別人のようだった。
「酷いわ、どうしてそんなこと」
「もういい! 理解してくれないのならお前なんて要らない! 婚約は破棄だ!」
「何よそれ、本気?」
「当たり前だろ! 本気だ! お前のような平凡な女が俺を縛るな!」
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