2 / 2
後編
しおりを挟む慰謝料は少しだが支払ってもらえた。
それで完全に納得できたかというとそうでもないけれど。
でも何もないよりかはましだった。
「ロルベンさん、婚約破棄したんですって~」
「酷いわねぇ」
「結婚式の前だったみたいなのに~」
「それは最低ね」
ロルベンが一方的に婚約を破棄した、という情報は、あっという間に周辺地域に広がったようだった。
「ロルベンってやつ、酷すぎない?」
「それな!」
「ほーんとそうよねー」
彼の悪口を言う人はあっという間に増えていった。
ロルベンは愛する人との道を選んだ。けれどもその代償として色々なものを失った。主に、周囲からの信頼や評価。婚約者を一方的に切り捨てたために、ロルベンは多くのものを失うこととなったのだ。
それでも彼は愛を選んでいるようで。
愛する人のために生きているようだった。
◆
――あれから三年。
私は今、二つ年上の男性と結婚し、夫婦となっている。
「今日で結婚二周年だね!」
「そうね」
「二周年おめでとう! そして、今日までありがとう!」
「こちらこそありがとう」
ロルベンはあの後愛する人と結婚したそうだが、いざ結婚してみると相手の女性が豹変したようで、尻に敷かれるようになってしまったそうだ。
その家において、ロルベンには人権などなく。
彼はただひたすらにこき使われる日々を生きなくてはならないようになってしまったようだ。
しかも、その時には既に社会からの評価は大幅に低下していたため、知人に助けを求めることはできず――高圧的な妻に従うしかないみたいだ。
彼女と結婚したことを後悔しながらも、ロルベンは日々、小さくなって生きているようだ。
……ま、だとしても、それもまた彼が選んだ道だ。
私がそうさせたのではない。
むしろ私は被害者。
今の場所を選んだのは他の誰でもない彼自身。
だから自業自得というやつだ。
「これからもずっと仲良しでいようね!」
「ええ!」
「あはは、嬉しいな~」
「私も貴方と出会えて良かったと思っています」
ロルベンは奴隷のような人生を歩むこととなり、私は愛おしい人と結ばれて穏やかな結婚生活を謳歌できることとなった。
婚約破棄後、どちらが幸せになれるかなんて――案外、後になってみるまで分からないものだ。
◆終わり◆
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
10
この作品の感想を投稿する
1 / 3
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる