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3話「私は何もしていないのですよ」

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 ――数日後。

 私は再び彼のもとへ向かう。

「目撃情報はありましたか?」
「……なかった」

 今日はマルティオーレはいない。

「だ、だが! 僕は信じない! ……君が上手くやって皆を黙らせたのだろう」
「しませんよ、そんなこと」かぎ
「嘘だ! 嘘つきめ、許さない!」

 思わず溜め息を漏らしてしまった。

 ここまで洗脳されているとは。
 さすがに驚きだ。

「では逆に、私があの方を苛めた証拠はあるのですか? そこまで頑なに私が苛めていたというなら、証拠を出してください。あ、本人の主張以外で、ですよ」

 するとエガルは黙り込んでしまった。

「ないでしょう」
「ぐ……は、はめやがって……。ユーリカ! 許さない! 卑怯者め!」
「卑怯者? それは私に対する言葉ではないはずですよ」

 私はただ本当のことを言っただけ。
 それが卑怯なのなら、この世は冤罪だらけになってしまうというものだろう。

「では私はこれで。さようなら、エガルさん」

 その日、私たちの関係は終わった。
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