永遠に誇れる人生を

四季

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4話

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 私は九歳の誕生日を迎えた。初めてマルスベルク人以外の人間……恐らくキャロット人を見た日から一年が経過していた。フライ王子とリーツェルと三人だけで、誕生日会が行われた。私は幸せだった。その特別な幸せが、徐々に当たり前になりつつあった。気まぐれな王子も、差別階級という言葉を連発する困ったリーツェルも……私の家族に近かった。

 その時の私は考えもしなかったのだろう。破滅へと向かっているという事など。


 フライ王子はある日、隣国の王女・ブラウンを拐ってきて、牢獄へと入れた。そこが終わりの始まり地点だったのだろうか……と今こそ思う。その理由は宣戦布告をする為などではなかった。単純にナタリアに似ているから。それだけだ、と彼は教えてくれた。毎日のように彼女のいる牢へ行き、嫁になれと口説いていた。その様子を見てリーツェルが嫉妬していたのが懐かしい。私はついこの前まで、ブラウンという名前しか知らなかった。会った事もたったの一度もなかった。忘れているのではないと思う。美女だというのは王子から聞いていたが。


 数日後のお昼頃、私が城の裏で植木鉢の手入れをしている時に、リーツェルが青い顔をして駆けてきた。いつも挑発しに来る時とは、明らかに違った。

 その彼女から、フライ王子の訃報を聞いた。

 その後はバタバタして忙しくて、はっきりと覚えている事はない。また私は失った。それから彼が大切な存在であった事に気付くが、もう遅かった。絶望はしなかった。その頃に大人だった使用人によると、私は意外と落ち着いていたらしい。あまり記憶がないが……。

 唯一覚えている事というと、夜な夜な泣き続けるリーツェルを慰めようと、完徹していた事だけだ。

 彼女が私に嫌味を言わなかった期間だった。

 彼女は私が守りたい。守らなければいけない。いつもいつも、大切な人を守れない私は、もう卒業したい。暫くしてフライ王子の姉・セルヴィア王女に引き取られた私達は、今までと少しだけ違う部屋で、また新しい生活を始めたのだった。今では夜間はセルヴィア王女の自室に入れないが、生活は変わらない。穏やかな日々が続いている。

 セルヴィア王女も、フライ王子とどこか似ている。
 違う点は威圧的でない事だろう。穏やかな笑顔が素敵な女性だと思う。


 王女とは思ったより長い付き合いになった。もっと早く捨てられるかと思ったが、そんな事はなかった。リーツェルもまだ生きており、ついには今年、十七になる。可愛らしい所もあるが嫌味がレベルアップしてきた気がする。しかし嫌味さえも微笑ましく思える。

 時折傷つく発言もあるが、それでも構わないと思っている。生きていてくれるなら構わない。彼女は先輩だが…妹のようなものだ。年下だし。これからも嫌味を言って欲しいと思う。大切な人なのだ。


 この前、隣国のマッシュルーム王国と同盟が結ばれた。セロリ連邦が攻めてきたからという事らしい。そっち方面は、私にはあまり分からないのだけれど……。

 時代はまた変わろうとしている。穏やかな日々が終わるかもしれないと思うと、不安がないわけではない。

 今度こそ守ってみせないといけないと思う。もう子供じゃないのだから……。

 そうすればきっといつか、家族にも王子にも、胸を張って会える。そう信じている。
 大切な人には笑っていて欲しい。泣かせたくないから、悲しませたりしたくないから。だから私は、大好きな人を守る。


 最後のマルスベルク人として立派に生きられる様に。そして最高の最期を迎えられる様に。


◆終わり◆
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