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彼はまずフライと名乗った。それから「君の目は綺麗だ。だから私の側近になれ」というような内容のハチャメチャな事を言われた。私は呆れた。
フライ王子と私が話していたのは、そんなに長くない時間だった。短い時間ではあったが、悪いだけじゃない、彼からは優しさも漂っていた。始めはそんな気は全くなかったのだが、私は結局、彼の手をとった。こうして私は、フライ王子の側近になる。
時の流れはあっという間なもので、気がつくと夏になっていた。
フライ王子は、私を色々なところに連れていってくれた。
村しか知らなかった私には、キャロットの城下町は広すぎた。広すぎたが、輝いて見えた。暑い気候にはてこずらされたが、次第に慣れていった。
フライ王子と出掛ける時は、いつもリーツェルが横にいた。二人きりという事は滅多になかったように思う。リーツェルはその頃から、いつも私をいじくって楽しんでいた。彼女がくすくすと愉快そうに笑うのを見ると、時折妹を思い出した。
その年の秋頃、私は王子に想い人がいることを知る。
城には沢山の女性がいる。どんな女性にも、彼は平等に高圧的に接していただけに意外だった。
その想いの人はナタリアという、王子より少し年下ぐらいの女性であった。整っているが強気な顔の為、私はどちらかというと苦手だった。毎日毎日…シェルヴィッツが彼女の喫茶店に行き、ナタリアを城へ連れてきた。フライ王子には厳しく断る態度をみせていたが、私達には特に害のない人だった。
ある日を境に、ナタリアは来なくなった。処刑でもされたのかと思ったがどうやら王子をふったらしいと風の噂で聞いた。遂にナタリアを諦めたのだろうと思っていた。
今思えば、この頃が一番幸せだったのかもしれない。
生きる希望もない。愛する家族もいない。脳内を行き来するのは、いつ誰を消してやろうかという事と、私はいつまで生きていていいのかという事だけ。そんな私だったが、少しずつではあるが変わり始めていた。
家族もマルスベルク人も、もう皆いなくなってしまった。だけど、今私は生きているのだ。偶然救われたこの命を、無駄にするべきではないと思うようになっていた。フライ王子は憎い相手の筈だったのに、いつからか私は彼を尊敬していた。私の命を助けてくれた彼に、何かお返しをしたい。その為に私は生きようと決意した。
フライ王子と私が話していたのは、そんなに長くない時間だった。短い時間ではあったが、悪いだけじゃない、彼からは優しさも漂っていた。始めはそんな気は全くなかったのだが、私は結局、彼の手をとった。こうして私は、フライ王子の側近になる。
時の流れはあっという間なもので、気がつくと夏になっていた。
フライ王子は、私を色々なところに連れていってくれた。
村しか知らなかった私には、キャロットの城下町は広すぎた。広すぎたが、輝いて見えた。暑い気候にはてこずらされたが、次第に慣れていった。
フライ王子と出掛ける時は、いつもリーツェルが横にいた。二人きりという事は滅多になかったように思う。リーツェルはその頃から、いつも私をいじくって楽しんでいた。彼女がくすくすと愉快そうに笑うのを見ると、時折妹を思い出した。
その年の秋頃、私は王子に想い人がいることを知る。
城には沢山の女性がいる。どんな女性にも、彼は平等に高圧的に接していただけに意外だった。
その想いの人はナタリアという、王子より少し年下ぐらいの女性であった。整っているが強気な顔の為、私はどちらかというと苦手だった。毎日毎日…シェルヴィッツが彼女の喫茶店に行き、ナタリアを城へ連れてきた。フライ王子には厳しく断る態度をみせていたが、私達には特に害のない人だった。
ある日を境に、ナタリアは来なくなった。処刑でもされたのかと思ったがどうやら王子をふったらしいと風の噂で聞いた。遂にナタリアを諦めたのだろうと思っていた。
今思えば、この頃が一番幸せだったのかもしれない。
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