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後編

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 ◆


 それからしばらく、私は、実家を離れることにした。
 体調が悪かったからだ。
 空気が良い地域にある母親の実家へ行くこととなった。

「いやぁ~、来てくれて嬉しい! ありがとぉね!」

 そこには祖父母がいる。

 特に祖母は温かく迎えてくれた。

 もちろん祖父も嫌な顔はしなかった。
 ただ無口な人なだけ。

 そこでしばらく生活しているうちに、体調は段々回復してきた。

「スープよぉ、飲めそう?」
「ええ」
「はい、どうぞ。おかわりもあるからね」
「ありがとう、ばば」


 ◆


 祖父母の家で療養がてら暮らしていた私は、少し散歩するようになった頃に同じく散歩していた近所の男性と知り合った。それから定期的に喋るようになった。そうしているうちに段々仲良くなっていって。で、最終的には結婚するに至った。

 こうして穏やかな幸せを手に入れることができた私だったが、一方で、リリウは幸せにはなれなかったようだ。

 彼は愛する人と結婚したそうだが、結婚後にその女性が凄まじい浮気性であることが判明。数ヶ月で五回六回以上浮気されてしまったショックでリリウは心が壊れてしまい、一日中ベッドで寝ていることしかできないような状態となってしまったそうだ。

 ちなみに、二人は既に離婚しているようだ。

 ただ、それでもリリウの健康は戻らず、彼は今は実家で親に世話してもらいつつ生きているらしい。

 が、言葉を発することはほとんどないような状態だそうだ。

 一時的に高まった愛を貫いても必ず幸福になれるとは限らない――そういう悲しい事例だ。


◆終わり◆
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